「35歳で百万長者になる」と決意

その後もバフェットの小さなビジネスは続き、フットボールの試合でピーナッツやポップコーン、古いゴルフボールを拾い集めて売ることで少しずつ銀行口座の残高は増え、バフェットが初めて株式投資を行った11歳の時には120ドルに達していた。

桑原晃弥『伝説の7大投資家 リバモア・ソロス・ロジャーズ・フィッシャー・リンチ・バフェット・グレアム』(角川新書)

それは家族が驚くほどの金額だったが、バフェットがこれほど小さなビジネスと貯金に励んだのには理由がある。10歳のある日、バフェットは地元の図書館で一冊の本に出会っている。タイトルは『1000ドル儲ける1000の方法』だ。その本には1000ドル儲けることができる小さなビジネスが1000も紹介されていた。もしすべてを実行すれば100万ドルになる。

バフェットはこの本に書かれていた「複利で増える」ビジネスに強く惹かれている。もし1000ドルの元手でスタートしたとしても、年利10%の複利で増やせば5年で1600ドル、25年で1万ドルを超えることができることを知ったバフェットは35歳までに百万長者になることを決意している。

そう決意したバフェットがある日、父ハワードのビジネス・パートナーだったカール・フォークの奥さんにその決意を伝えたところ、フォーク夫人から「なぜそんなにお金が欲しいの?」と聞かれてこう答えている。

「お金が欲しいんじゃないんです。お金を稼いだり、それが増えていくのを見るのが好きなんです」
ビジネスは人なり 投資は価値なり―ウォーレン・バフェット』〔ロジャー・ローウェンスタイン/訳・(株)ビジネスバンク〕

バフェットにとって「お金」は「自立」を意味するものだった。お金があれば、人生で自分のやりたいことができる、というのがバフェットの考え方だった。

ビジネスを始めた年齢が早いほど成功しやすい

バフェットによると、何がビジネスの成功に関係しているかというと、それは学業成績でも家柄でも、ビジネス・スクールに通った経験でもなく、ビジネスを始めた年齢が早いかどうかだという。

たしかにIT企業の成功者の多くは10代、20代で起業しているし、投資家のジム・ロジャーズも5歳の時から小さなビジネスを始めている。彼らはみな最初から成功者であったわけではなく、非常に早い時期に小さなビジネス、小さなアイデアからスタートして、ある時期から急成長を遂げ、成功者となっている。