通信料金の引き下げが家計を救う
では、日本で「生活者の視点」に立った政策は何が考えられるか。
まずはドイツに倣って消費税率を時限的に引き下げることだろう。特に生活必需品の軽減税率を現状の8%から3%、あるいは思い切ってゼロにすることだ。生活困窮者を支える一助になるし、生活必需品だけの減税ならば、金持ち優遇の批判も出ない。
副次効果もある。飲食をレストランですれば10%の税率がかかるが、テイクアウトすれば0%ということになれば、テイクアウトやデリバリーへのシフトが進む。新型コロナ対策として効果もある。
電気代はどうか。日本の家計にとって重石になっているのは電気よりも通信料金だ。
2019年の家計消費支出(2人以上世帯)の月平均額は29万3379円だったが、このうち通信が1万3599円と4.6%を占める。しかも2011年の1万1928円から8年連続で増えている。このほど首相になった菅義偉氏が、官房長官時代を通じて、携帯電話料金の引き下げを求め続けたのは、ある意味、適切な主張だった。
では、通信料金をどうやって引き下げるべきか。これまでは通信各社間の競争を促進することで料金を下げていこうという「真っ当な」方法をとってきた。だが、今は非常時だ。生活者を守るならば、通信料を半額にするために助成を出せばいい。ただし一律に業者に配れば競争が起きず、官業に戻ることになりかねない。
失業者や収入が減る人を支える施策が必要だ
半額になるバウチャーを国民に配り、国民に通信業者を選択させれば、競争原理を働かせたまま、助成金を配ることができる。国のバウチャーを獲得しようと、通信業者が独自に上乗せで値引きをするかもしれない。単純計算すれば、通信料を半額にすれば、家計消費支出の2.3%分が生活者の手元に残る。
ちなみに食料品は家計消費の25.6%を占めるので、消費税率が8%からゼロになれば、家計消費支出の2%分が残る計算だ。この2つを実施するだけで、生活者を支える効果はかなり大きい。
「Go Toトラベル」にしても、今後農林水産省が実施する「Go Toイート」にしても、視点は「業者救済」だ。日頃業者と付き合っている省庁が実施するのだから、業者視点になるのも当然と言えば当然だろう。だが、今、大事なのは生活が困窮する人たちをどう支えていくかという「生活者」の視点だ。
3月期決算企業は10月から11月の中間決算発表に向けて今年度通期の業績予想を立てる作業が本格化する。多くの企業が業績予想を立てられずにいたが、いよいよその数字が次々に明らかになってくる。かなりの数の会社で巨額の赤字決算となり、黒字でも大幅減益が避けられないところが少なくない。当然、赤字見通しとなれば、人員の圧縮などリストラを行う企業が出てくる。年末の賞与は大幅に削減される会社が続出するだろう。
そうした中で、失業したり、収入が減る人たちをどう支えるか。生活者の視点に立った対策を早期に立案して実行することが求められている。