定額給付金は「平等」ではない
政府が行う新型コロナでの経済対策は、軒並みこうした矛盾を抱えている。ひとり一律10万円の定額給付金もそうだ。国民全員に一律で同額を配っているのだから「平等」ではないかと考えがちだが、どうも違う。
総務省の家計調査にはその「歪み」が表れている。調査には「勤労者世帯の実収入」という項目があるが、5月以降、それが急増しているのだ。5月9.8%増、6月15.6%増、7月9.2%増といった具合だ。明らかに10万円の定額給付の効果だが、一方で、家計消費は大きく減っており、多くが貯蓄に回っているとみられる。パソコンやクーラーなどを購入する人が増え、家電量販店が最高の利益を上げるなど、一部の消費増にもつながっているが、本当に生活に困窮している人たちに十分な現金が行きわたっているとは言えない。
生活が困窮している人にだけ配ろうとすると時間がかかる、とりあえずの資金繰り破綻を避けるための緊急措置としては致し方ない、という話だった。だが、結果的には富裕層にとって本来不要なお金が配られ、それが不要不急の消費や貯蓄に回っているというのが実情だろう。
「生活者の負担を軽減する」ドイツの経済対策
一連の経済対策で欠如しているのは「生活者の視点」だ。ドイツは7月1日から半年間の時限措置として消費税に当たる「付加価値税」の税率を19%から16%に引き下げた。食料品など生活必需品の軽減税率も7%から5%に下げられている。
日本の報道を見ていると消費喚起策と解釈されているケースが多いが、消費喚起というよりも、明らかに生活者への支援を意識している。特に生活必需品である食料品などの軽減税率を日本よりも低い5%にしたのは、明らかに生活支援策だ。減税規模は200億ユーロ(2兆4000億円)に相当するとみられている。
ドイツの経済対策が生活者を支える視点から打たれているのは、電気料金の引き下げが盛り込まれていることでも分かる。ドイツの電気料金は非常に高く、家計支出の重石になっている。電力会社を助けるという発想から出た政策ではなく、あくまで生活者の負担を軽減するという狙いがある。
同時に、ドイツ鉄道への支援も決めている。旅客数が激減している生活者の足としての鉄道を守ることが目的だが、もともと国営企業だったドイツ鉄道だけを支援するのは不公平だという反対の声もある。