「株価は上昇する」という強い思い込み

9月14日にはSBGが傘下の英半導体設計アームの全株式を米半導体大手エヌビディアに売却することを合意した。それは、IT先端技術を生み出して世界経済の“デジタルトランスフォーメーション(DX)”をけん引する事業会社としての競争力向上を目指すよりも、投資事業に集中するというSBGの意思表明の表れと解釈できる。

今後の展開を考えた時、中核的なIT先端企業の株式に投資するSBGの戦略が想定された成果を上げるかは、不透明な部分もある。

米国を中心に株価は割高との見方もある。コロナショックの影響から世界的に個人消費は低迷し、雇用環境は厳しい。4~6月期の主要国のGDP成長率は中国以外大幅なマイナスだ。

また、米中の対立は先鋭化しており、中国の半導体調達やグローバルなサプライチェーンの混乱などは世界経済を下押しする。世界経済の回復に不可欠なワクチン開発に関しても、英アストラゼネカが試験中断を発表するなど不確定な部分も少なくない。

それでも株価が高値圏で推移しているということは、個人投資家を中心に投資家の「株価は上昇する」という思い込みが強いとも考えられる。コロナショックによって世界的に金利が低下した結果、投資家は相応の利得を手にするために成長期待の高いGAFAM株などに資金を振り向けた。それが追随の買いを呼び、株価が上がるという思い込みが広がった。

そうした状況が永久に続くとは考えにくい。米SEC(証券取引委員会)がロビンフッドの情報開示体制を調査していると伝わると株価は下がった。“おっかなびっくり”の姿勢で株式に資金を投じている投資家も多い。

カネ余りと思い込みに支えられた相場の末路

また、特定少数の投資家のポジションが大きくなると、相場展開が歪むことも想定される。SBGは巨額の資金を投じてコールオプションを購入したことによって、株価の上昇を勢いづかせた。

ナスダック総合指数を見ると、5月から7月まで各月7%前後上昇したのに対して、8月の上昇率は10%に達している。特定のポジションが積み上がると、相場全体が一方向に大きく振れやすくなるのだ。

仮に、類似のポジションを持つ投資家が損失の発生に耐えられなくなって損切をする場合、かなりの勢いで追随売りが発生する恐れがある。

資産価格の上昇が未来永劫続くことはありえない。特に、現在のようなカネ余りと思い込みに支えられた相場は、どこかで調整を余儀なくされる可能性は高い。

8月以降に上場株式などへの投資戦略を強化するSBGの取り組みが、今後、同社に大きな利益をもたらすか否かは予測が難しい部分が多い。先行きを注視する必要がありそうだ。

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