孫正義の投資戦略に異変あり
8月に孫正義氏率いるソフトバンクグループ(SBG)が、米国の大手IT先端企業の株式のデリバティブ(金融派生商品)を数千億円規模で購入したと報じられた。報道によると、SBGはコールオプション(株式を買う権利)を購入することで、米アマゾンをはじめ大手ITプラットフォーマーなどの株価上昇から利得を上げようとしたとみられる。
これまでSBGは、基本的にアリババなど非上場の株式への投資を行ってきた。その投資戦略を今回は変更したことになる。コロナショックが発生するまで、孫氏は世界各国の「ユニコーン企業〔創業10年以内の企業価値評価額が10億ドル(1060億円程度)以上の未上場ベンチャー企業〕」に投資した。しかし、2020年の年初以降、コロナショックの影響によって投資先の業績が悪化し、SBGは大幅な赤字に陥った。
SBGは回復が鈍い未上場株から、株価が大きく上場している大手ITプラットフォーマーへの投資を増やすことによって収益を挽回したい。ただし、その戦略が想定された成果を上げるか否かは読みづらい。
世界経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)と比較すると、米国のIT先端企業を中心に株価は高すぎる。“高値恐怖感”を強める主要投資家が多い中、SBGがリスクを的確に把握し、管理できるかが問われる。