これは仕事人間が陥りやすいワナかもしれません。
「自分ができたんだから、お前もできるだろ?」と当然のこととして求めてしまう。それが相手のためと思っていても、知らず知らず、相手をつぶしているかもしれないのです。
後輩を一人でも持ったら、皆さんもそのときから教える立場に回ります。そこでつまずくことも多いかもしれません。
僕の失敗をマネしないように、皆さんは失敗をショートカットして、いいチームをつくってください。それは自分にとっての大きな成長につながります。
方向性も役割分担もない高級レストラン
そもそも、どうしてこんなに末期的な症状になってしまったのでしょうか。
一番の原因は、僕が方向性を示さず、役割分担と裁量の範囲を決めなかったからです。恥ずかしながら、人を集めればレストランは回ると思っていました。
方針がなければ、当然ながらみんな迷いますし、僕からの指示を待つしかなくなります。それぞれのやり方でやるしかないので、ムダや対立が生じます。役割分担がなければ、仕事の押し付け合いや奪い合いが起こります。
逆に言えば、それがあれば目指す方向に向かってその役割を果たしてくれるんです。今のやり方ではダメだと気付いた僕は、サイゼリヤでバイトを始めました。
迷いなく楽しく働けるサイゼリヤ
そこで職場の雰囲気がよいことに衝撃を受けたと、すでにお話ししました。バイトの仲間とは歓送迎会で一緒に飲みに行くぐらい仲良くなり、「何これ。すげー楽しい!」と僕はすっかりなじんでいました。
みんな、普段は和気あいあいとよい雰囲気でも、仕事では手を抜きません。高校生だって、自分の頭で考えて行動している。そういうフラットなチームのほうがはるかに生産性が高いんだと気づきました。
当然ですが、スタッフの目指すべき方向性も、与えられた役割も明確です。さらにサイゼリヤの考え抜かれた仕組みと高い生産性があるので、スタッフが流れるように迷いなく働くことができる。
そうすると、余計なストレスがかからないんです。この条件を満たして初めて、サイゼリヤは「人のために、正しく、仲良く」という経営理念を体現することができるんです。