■検証!そのとき私はどう対処したか
未亡人宅に若い詐欺師の魔の手が迫る

ご主人を亡くし、渋谷区内の戸建て和風住宅に一人住まいをするTさん(70歳)のところに、作業服を着た30歳ぐらいの男性が訪ねてきたのは、5年前のことだった。彼は「近所で下水管の工事をしている者ですが、お宅の配水管も調べてあげましょうか」と切り出した。

配水管は屋外にあるし、何より「近所」という言葉に安心したTさんは「どうぞ」と返事をした。男性は蓋を開け、きれいに掃除もして、1万円ばかりの手数料を受け取って帰っていったという。

何日かして、今度は別の男性が「良い家ですね。長持ちさせるためにも、ぜひ床下を拝見させてください」と玄関先にやって来た。前回のこともあり、Tさんはうっかり家に上げてしまったのである。

しばらく床下に入っていた男性は、出てくると「大変です。湿気がひどく、シロアリもいるみたいですよ。いま処置をしないと、せっかくの家も持ちません!」と、なかばTさんを脅すかのようにまくし立てたのだ。

驚いたTさんに、男性は床下換気扇のカタログを見せながら「これを取り付ければ安心です。お宅の場合は4基必要ですね。いまなら特別に安くできます」と、その場で見積もりまで行い、Tさんは、いわれるままに契約書に捺印してしまった。

見積もりには、床下にまく調湿剤も含まれており、ほぼ100万円の工事になった。その後も、Tさん宅には別の業者が訪れ、屋根や壁への耐震金物による補強などを売り込んできた。結果的に、リフォームの総額は1千数百万円に達した。

後日Tさんは、そうしたリフォームでお年寄りを食い物にする業者の存在をニュースで知る。ある日、新聞の生活欄を読んでいると〈悪質リフォームを見かねて「無料相談」を始めます〉という記事を見つけた。住宅研究社の山川義光氏が、消費者向けに開催したものである。