しかも、この動作が守られているかどうかは、数字によって把握されている。

「たれ、肉、米の使用量のバランスを見るため、たれ比、米比といったデータをデイリーで取っています。規定のバランスより上でも下でもエラーが出る。エラーが出たら、スーパーバイザーやエリアマネージャーが店長を指導します」

つまり、基本動作を破るとたれの使用量が不適切になり、即、指導が入る。こうしたシステムの存在によって、店員の動作もアイドルタイムも一定に保たれ、高い回転率が維持されているのだ。

さて、前述したスペース・プロジェクト(http://president.jp/articles/-/2031)で安部社長は、当時11人/人・時だった人時客数を一挙に14人に引き上げて客数の増加に対応できる体制をつくり上げているが、実は、こうした高回転率のDNAは、吉野家発祥の地である築地店で、はるか昔に産声を上げている。

65年、席数わずか15の築地店は、年商1億円という驚異的な数字を叩き出している。1日の来客数1000人。営業時間は朝5時から昼1時までの8時間だから、回転率を計算してみると、なんと1日66.6回転である。ファミレスの回転率が通常5回転にも満たないことを考えると、この数字の異様さが際立つ。

【吉野家 DATA FILE(2)】

図を拡大
吉野家第1号店 築地店でのオペレーション
驚異の1日66.6回転――ファミレスの10倍超

第1号店である築地店は、築地市場の中という場所柄、忙しいお客さんが多い。お客さんの顔と注文内容を覚えておくという「記憶オペレーション」が行われていた。新人時代、安部社長も1000人の「マイオーダー」を覚えていたという。

(鷹野 晃=撮影 ライヴ・アート=図版作成)