病院はどこまでリモート化できるか

医療法人社団親樹会・恵泉クリニック(世田谷区・従業員数55人)は、医師や看護師が主に高齢者など在宅療養が必要な患者の自宅を訪ねて診療、看護をしている(20年7月1日現在、患者数は548人)。業務上、全員の在宅勤務は難しいが、20年3月上旬に3人の職員が在宅勤務を導入。

その3人は検査技師、アシスタント、総務や経理などの事務統括だ。作業の出来は通常勤務時と変わらず、精度は高く、残業はないという。

非常勤を含め40人を超える医師と看護師はあえてしなかった。本人たちの強い要望だ。20年3月に訪問診療自粛を提案したが、患者からは「(医師や看護師と自宅で)話がしたい」「さびしい」といった声が多かったそうだ。

通常勤務では、訪問看護師は午前8時50分から午後5時30分までに平均5軒の患者宅を1人で車を運転し、訪問する。症状の観察や人工呼吸器などの医療機器の処置・管理、吸引や床ずれの対処、予防、生活指導、療養相談を受ける。

「患者さんの診療をするのは対面でないと、なかなかできない。医師や看護師は視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感を生かして診察する。パソコンの画面での診療だけでは難しい。患者さんの大半が高齢者であり、最近は独居が増えている」(事務局長・内田玉實氏)

20年4月当初、クリニック内の密を避けるために自宅から患者宅に直行・直帰を検討した。だが、カルテ(電子カルテ)の扱いがネックになった。自宅でクラウドを通じて閲覧ができても、症状を書き込むことができなかった。一日の訪問を終えると、クリニックに戻り、カルテに必要事項を記入した。

現在は、今後の感染拡大を踏まえ、自宅で閲覧し、カルテに書き込むことができる体制を整備している。

完全リモートで新卒採用した結果……

採用コンサルティング業を行うプレシャスパートナーズ(新宿区・従業員数105人)は、20年3月初旬から全社員を在宅勤務にした。新卒(大卒)の採用活動を始め、数週間が経った頃だった。

2008年の創業以来、順調に業績を拡大し、11年から大卒の新卒採用を毎年行う。エントリー者数はここ数年、数千人に達し、同一業界のベンチャー企業と比べて多い。

20年は、本格的にWEBやオンライン採用を導入した。これまでの採用の大きな流れは、1次が会社説明会と座談会→グループディスカッション→2次面接→3次面接→適性検査と面談→社内見学と仕事体験→4次(最終)面接となる。