超大型は時代遅れ「穴場感」が鍵となるか

ホテルのサービスでは「雰囲気」という目に見えない要素が小さくない。「紹介意向」で最高点の「フォーシーズンズホテル椿山荘東京」は駅から遠く、普通に考えれば立地条件は良くない。だがホテルの場合は悪いとも言い切れない。立地が良すぎるとホテル内に雑多な顧客が出入りし落ち着いた雰囲気を保てないからだ。庭園も含めたロケーションが強さに繋がったのだろう。

立地条件の悪さがマイナスになるとは限らない
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立地条件の悪さがマイナスになるとは限らない

その点、プリンスホテルグループは団体の旅行客が多く“シティホテル”として落ち着ける場所とは言い難い。「グランドプリンスホテル赤坂」は2007年から「グランド」という冠を付けたが、顧客のイメージは変わっていないことが読みとれる。団体専門のフロアあるいは別棟を設け、それ以外の顧客との混在を避けるといった対策が必要だろう。

東京の御三家「帝国ホテル」「ホテルオークラ東京」「ホテルニューオータニ」といった老舗ホテルはいずれも総合トップを逃した。その理由は施設とサービスの両面から考えられる。築年数の経ったホテルは造りが古く施設面で不利がある。たとえば地下に設けられた食堂街はどうしても暗いイメージがつきまとう。また古いタイプのホテルはいずれも1000室以上の「超大型」であるため、価格はリーズナブルなのだが、サービス面では行き届かない部分が出てきてしまう。

これに対して新興の外資系高級ホテルは手厚いサービスを行うため客室数を300室程度に抑えて一室あたりのスタッフ数を多く配置している。また客室数が少なければ立地の制限が少なく、飲食部門を含めてすべての施設を超高層に集めることもできる。抜群の眺望は雰囲気づくりに大きな影響を及ぼす。「大きいことはいいことだ」といった超大型ホテルではなく、手厚いサービスを誇る中・小型のホテルが時代の趨勢である。十分なサンプルが得られなかったため表への掲載は見送ったが、外資系高級ホテルが高い評価を集めたのは当然だろう。

では新しいホテルほどいいかというと、そうとも言い切れない。開業したばかりのホテルはサービスにばらつきがあるからだ。大阪では03年開業の「スイスホテル南海大阪」や1997年開業の「ザ・リッツ・カールトン大阪」が高評価を得たが、これは開業後の努力の結果だろう。東京でも新興ホテルの質が安定してくれば老舗ホテルはさらに厳しくなるだろう。

調査結果からわかるように顧客の目は予想以上に厳しい。東京では「ロイヤルパークホテル」が総合点でトップに立った。決して知名度の高いホテルではないが、使ってみたら「意外に穴場のいいホテルだ」という利用実態を反映した結果だろう。有名ホテルはブランドというゲタを履いている。目利きとなった顧客の期待を上回るにはまだまだ付加価値を高度化させる余地がある。

ヤフーバリューインサイトに調査を依頼。20歳以上~70歳未満の会員のうち1000人から回答を得た。調査期間は2008年1月28~29日。編集部で選定した223の有名企業・ブランドについて満足度と重視点は3段階、再訪意向と紹介意向は2段階で尋ね、100点満点に換算した。総合点は重視点を反映させており5項目の和と一致しない。サンプル数5件以下の企業は掲載を見送った。
(中村尚樹=構成 ライヴ・アート=図版作成)