※本稿は、村上世彰『村上世彰、高校生に投資を教える。』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
投資家・村上世彰から各20万円を提供されたN高生44人が投資
「お金の本質を多くの若者に理解してもらいたい」
私、村上世彰は、そんな思いでN高等学校(N高)投資部の特別顧問を引き受け、10カ月にわたって高校生の投資教育に取り組みました。高校生44人に、ひとりあたり20万円を支給。投資先は東証上場銘柄に限定し、損をしても返済は不要で、利益が出た場合は部員個人のものになるというルールです。
下記は、彼らに講義した際の質疑応答の様子です。
質問1【暴落で買うか、上昇トレンドで買うか】
【部員】「株は暴落した時が買いチャンス」という人もいますし、「上昇トレンドに乗っている株を買うのがいい」という人もいます。株価が大きく下がっているものを買うのがいいのでしょうか、それとも、上昇トレンドの最中のものを買うのがいいのでしょうか。
【村上】まず、株を買う時には資産や収益といった、バリュー面での裏付けが必須だと思います。たとえば、「1000円の価値があると思われる株が500円になっている」と判断できるならば、バリュー面では買いチャンスだと言えるでしょう。
ですから、大きく下がってバリュー面でかなり魅力的になり、持ち続ければいずれ大きく株価が戻るだろうと考えられるならば、基本的には「大きく下げたところで買う」という判断でいいと思います。
もちろん、どんなに大きく下落しようと、魅力的でないなら「買い」とは判断できません。あくまで資産や収益の状況を検討しておく必要があります。一方、上昇が続いている株であっても、バリュー的にまだまだ魅力的で、「まだ本来の価値の半値くらいしかない」と判断できるのであれば、やはり「買い」と判断してもいいのではないかなと思います。
また、経済や相場のトレンドというのも意識するべきでしょう。
経済が一度下降トレンドになってしまうと、企業業績が悪化して、株価が下がって、そのことで消費が停滞して、さらに業績が悪化して、株価が下がって……というように、どんどん事態が悪化して、底なし沼のようになっていくこともあります。そうした場合には、大きく下落したからといって一気に資金を株に投入してしまうと、その後、資産が減っていくのを、指をくわえて見続けるはめになるかもしれません。
私は、父の教えである「上がり始めたら買え、下がり始めたら売れ」という言葉を大切にしています。買いについては、悪材料がほとんど株価に織り込まれて、もうこれ以上株価を下げづらいという状況になり、底を打って上がり始めるのを確認してから買うのがいいということです。バリューを重視しつつも、きちんとトレンドのことも意識して、タイミングを見極めるべきです。