リアルの会話の「話の脱線」「想定外のリアクション」が嫌い

【雑談が苦手な理由】スマホによる変化③「対人」が苦手になった

カフェや電車で人間観察をしていると、「スマホの画面を見ながら隣の人と会話をしている人」をよく見かけます。「話す時は、相手の目を見て話すように」と教えている「話し方教室」の先生が見たら卒倒しそうな光景ですが、私もときどきやってしまいます。今の若い人には、こうしたコミュニケーションスタイルはすでに当たり前のものになっています。

日本の地下鉄車内、スマホを見つめる人たち
写真=iStock.com/RichLegg
※写真はイメージです

臨床心理学者のシェリー・タークルは『一緒にいてもスマホ』(青土社)のなかで、スマホが、「フェイストゥフェイス」の会話を激減させており、会話能力の低下を招いていると警鐘を鳴らしています。

仕事で知り合ったある高校生はこんなことを言っていました。

「リアルの会話は、話がいつ脱線するかわからないし、想定外のリアクションが返ってくるし……うまくコントロールできない感じ、嫌なんですよね」

彼らにとっては、もはやスマホのSNSなどでの言葉のやりとりが「メイン」で、リアルの会話が「サブ」なのかもしれません。ある調査(*)によれば、10代、20代の平成生まれ世代の67.6%が、「人の視線をストレスに感じている」そうです。これは昭和生まれ世代の48.8%をはるかに上回ります。確かに、スマホがあれば、人の目を見て話す必要もないのですから、そうなってしまうのも無理もないかもしれません。

*マンダム「視線耐性とデジタルコミュニケ―ションに関する調査」(2018年8月、調査対象:15歳~59歳 男女 n=1091)

スマホが目の前にあるだけで、対人関係に悪影響をもたらす

さらに驚くべきことに、最近の研究では「スマホがそこにあるだけで、対人関係に悪影響をもたらす」ことも明らかになっています。英国の心理学者、アンドリュー・パージビルスキ博士は、初対面の男女でペアをつくらせ、小部屋に入ってもらい、「最近起きたこと」について10分間の雑談をさせる実験を行いました。

会話中、半数の被験者には、スマホをずっと机の上に置いておくように指示し、残り半数はスマホをしまって会話をさせます。会話の後、話した相手のことを評価してもらいました。すると、スマホを机の上に置きながら話したグループでは、スマホをしまって会話をしたグループに比べ、会話の質を低く評価し、相手への共感度や信頼度も低くなってしまいました。会話をするときは、スマホはカバンにしまったほうがいいかもしれませんね。