トランプ再選でも対中強硬は続かない
では、日本は今後どうすべきなのか。1つのポイントになるのは11月の米大統領選の結果だろう。米国のジョン・ボルトン前大統領補佐官は7月14日、日本経済新聞の電話インタビューに応じ、重要なことをさらりと言っている。仮にトランプ氏が再選を勝ち取った場合でも「対中強硬姿勢が続くか分からない」というのだ。
トランプ政権は経済や貿易を通じて対中関係を見ており、安全保障に関わる「経済以外の課題を考慮するのが困難だった。議論することすらできなかった」と語っている。つまりは、対中包囲網がどこまでのレベルで継続されるか分からないということではないか。
もう1人の米大統領候補、ジョセフ・バイデン元副大統領はどうか。バラク・オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏は、外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の2020年3月号の論文の中で「私は大統領として、アメリカの民主主義と同盟関係を刷新し、その経済的未来を守り、もう一度、アメリカが主導する世界を再現していく」と勇ましい。
トランプ大統領就任後、米国の世界におけるクレディビリティ(信頼性)と影響力が低下しているとしたうえで「中国その他の国との未来を賭けた闘いに勝利するために、技術革新を進め、問題のある経済プラクティスに対抗し、格差をなくしていくために、世界の民主国家の能力を統合しなければならない」「北京の指導者との交渉を重ねてきた私は、われわれが中国の何に対して反対しているかをわきまえている」とつづっている。
ただ、課題対処に最も効果的な方法として同盟国やパートナーとの共同戦線をまとめることを挙げているが、オバマ政権は南シナ海で中国が岩礁などを軍事拠点化したことを見逃しただけに、バイデン氏の発言は一歩引いて見た方が良い。
事なかれ主義で脆弱な日本
言うまでもなく、尖閣諸島をめぐる米国務省の見解は「日本の施政下にあり、日米安全保障条約が適用される」というもので、米国の防衛義務を定めた同条約第5条が適用される立場は変わりない。アジアにおける米国の関与は誰が次期大統領になろうが、レベルの差やスピードが異なるにしてもあり続けるだろう。だが、安保条約発効から60年を迎えた今日、国益や国民を守る「一人前の国家」として、日本の役割を見直さなくても良いのだろうか。
中国から数千発のミサイルが日本に向けられ、北朝鮮が核・ミサイル開発を進めても「遺憾砲」を繰り返すだけの事なかれ主義は、さすがにもう飽きた。注目された地上配備型迎撃ミサイル「イージスアショア」の導入撤回は理由があるにせよ、人権問題を抱える中国の習近平国家主席をコロナ禍の今もなお国賓として来日させようとしているなんて、あまりにもバカげている。超大国となった中国と向き合う世界のリーダーたちの姿を見ていると、米軍という「盾」に守られてさえいれば良いという日本の脆弱性と「自分の足で立つ」ことの重要性を感じてしまう。