ピンク・レディー、大ヒットの秘訣は「民謡」

異分野との交流はさまざまな価値を生み出す。身近な例では、1970年代後半に一世を風靡ふうびした「ピンク・レディー」の楽曲がヒットした秘密をご存じだろうか? 

その理由は、作曲家が「民謡」のリズムを取り入れたからだと言われている。すなわち、「歌謡曲」という枠のなかだけで作曲していると、斬新なメロディーは生まれない。「歌謡曲」の常識を打ち破り「民謡」のリズムを取り入れる——大袈裟に言えば、異分野との交流こそが新たな価値を生み出すのだ。

今やハーバード・ビジネス・スクールのケーススタディの定番とも言える、トヨタ自動車の「かんばん方式」が、米国のスーパーマーケットの在庫管理方式からヒントを得たというのは有名な話だ。流通業という異分野からヒントを得ることで、世界に冠たる「かんばん方式」が誕生したのである。

筆者は、こうした視点から、日本人は積極的に「副業」を持つべきだと考えている。異分野の知見のなかにこそ、新しいイノベーションの種が山ほど埋まっているからだ。

「熟議」の徹底が日本政治再生の最大のカギ

話を元に戻そう。異分野という意味では、古今東西の人間の知恵が凝縮されたのが、まさしくリベラルアーツである。実際にリベラルアーツを学ぶと、単純な事象でも深く考察することができる。例えば、「日本型民主主義」は、リベラルアーツに照らすと、以下のように考えることができよう。

現在、わが国では政治への不信感が蔓延している。政治が再生するためには何が必要だろうか?

筆者は、議員や国民が議論を尽くすこと——すなわち「熟議」の徹底こそが、日本政治再生の最大のカギだと考えている。歴史的に、日本には「熟議」を行う伝統がある。

例えば、わが国の神話に登場する神々は、何かあるとすぐに集まって議論する。天照大御神あまてらすおおみかみ天岩戸あめのいわとにお隠れになった際にも、八百万やおよろずの神々は対応を協議した。聖徳太子が制定した「十七条憲法」や、明治維新の際に公布された「五箇条の御誓文」にも、「熟議」を尽くすことの重要性がうたわれている。