ブランド化し、協賛企業が群がった「ミス慶應」

1990年代から2000年代、かつてミスコンを粉砕した強硬な「反対勢力」はほとんどなくなった。バブル経済はとうに崩壊し、ITバブルを迎えるがそれもはじける中、大学ミスコンは元気だった。

なかでも、「ミス慶応」は大学ミスコンのなかで圧倒的なブランド力を持っていた。ミスコンを主催するのは広告学研究会である。彼らは「ミス慶応」といいイベントの流れを次のように話している。

「候補者は広研のホームページの告知と学内のポスター掲示によって募集しました。また、自薦、他薦だけでなく私達がスカウトした方もいます。それは四五月に行いました。そして、六月に日吉でお披露目イベント、七月には七夕祭への参加、八月には当サークルが経営している海の家でのイベントというように学内でのプロモーションを積極的に行いました。そして今年十月十六日、十七日は109でのプレイベントを開催しました。このプレイベントと三田祭での会場投票、Web投票、携帯での投票数によって『ミス慶応』は決まります」(慶應塾生新聞2004年11月10日号)

「ミス慶応」には、協賛企業が群がっていた。2000年代後半、こんな報道がある。

「優勝者への賞品も豪華で、06年のミスには、外車のBMWが贈られた。昨年はティアラだった。(略)協賛金の総額について、研究会は教えられないとしているが、慶大広報室によれば、数百万円規模という」(朝日新聞2009年11月16日)。

「女子アナの登竜門」不祥事連発でも注目される理由

これほどまでに熱狂しエスカレートしたのは、大学ミスコンが社会的に影響力を持つようになったからだ。「ミス○○大学」はメディアでもてはやされてしまう。そして、何より大きいのはアナウンサーの登竜門の役割を果たしことだ。

TBSの元アナウンサーがこんな話をしてくれた。

「アナウンサー採用にあたってミスコン入賞者を現場のアナウンス室がダメ出しをしても、なぜか最終面接まで残ってしまう。幹部、役員レベルがはじめにミスコン入賞者ありきでピックアップさせたからです。それで失敗したケースはいくつもあるんですけどね」

慶應義塾大のミスコン出身のアナウンサーには中野美奈子、秋元優里、細貝沙羅、小澤陽子(以上、フジテレビ)、小川知子、青木裕子、宇内梨沙(以上、TBS)、竹内由恵、桝田沙也香(以上、テレビ朝日)などがいる。

「ミス慶応」のブランド力は大きい。それを運営する広告学研究会の学生たちの感覚はときにマヒすることがあるようで、不祥事をよく起こす。2009年、同会部員が駅構内を裸で走るなどして書類送検される。2016年には部員が女性部員を泥酔させて集団で強姦、動画まで撮影されたと報じられる。