2019年、2つの団体が慶應ミスコンを企画したが、のちに一団体が取りやめるというゴ
タゴタがあった。大学当局もかなり気にしており、公式にこんな告知を出している。

「近年、学外において、『ミス慶応』あるいはそれに類する名称を掲げたコンテストが開催されていますが、それらを運営する団体は本学の公認学生団体ではなく、コンテスト自体も慶應義塾とは一切関わりがありません。しかしながら、それらのコンテストには本学の学生も参加しており、一部報道に見られるようなトラブルも発生しています。本学はこうした事態を深く憂慮しており、状況によって今後の対応を検討していきたいと考えます」(大学ウェブサイト 2019年9月)。

大学ウェブサイトより
慶應義塾大学ウェブサイトより

学生、参加者、企業が築いた「ウインウインの関係」

それでも大学ミスコンはなくならない。学生はキャンパスを盛り上げたい、参加者はミスコンに出てキャリアアップにつなげたい、企業はミスコン活用で商品宣伝し金儲けしたい、などのさまざまな思惑で利害が一致してしまうからだ。ウインウインの関係が成り立つ以上、やめられないようだ。

ミスコンが盛んな大学は青山学院大、立教大、学習院大、そして東京大などがある。なお、早稲田大は2000年代に入って、「早稲田」と名のつくミスコンは禁じられている。同大学学生部はこう話している。

「きちんとした審査員がいるわけでもなく、容姿で女性を選ぶのは、どんな口実をつけてもダメです」(朝日新聞2009年11月6日)。

今年、東京大学新聞がミスコン開催の是非を問う記事を掲載した。反対する「ミスコン&ミスターコンを考える会」はこう訴える。

「女性は日々否応なしに外見や『女子力』などを男性に評価され、苦しむ人もます。コンテストはこうした日常的な行為を大々的に学園祭の企画として行い追認するものです。(略)コンテストは支持者が男性であろうと女性であろうと、ある一定の「女性はこうあるべき」というジェンダー規範を再生産し社会に浸透させています。このジェンダー規範が多くの女性を傷つけているのです」。

この主張について、「ミス東大」となった女子学生は次のような談話を寄せている。
「自分の人生を自分で切り開きたい人にとっていい機会だと思う、ミスコン自体は表面的な美の闘いだけではないと思う」(賛否いずれも、東京大学新聞2020年4月7日号)。

「多様性の尊重」の潮流がもたらすインパクト

女性差別を助長する。これまで大学ミスコンへの批判はこのような視点がメインだった。ところが、はじめに紹介した上智大、法政大、国際基督教大のように「多様性の尊重」が加わったことで、大学ミスコンを批判する層は広範囲になるとみていい。

昨今、LGBTQなど、さまざまな性のあり方を抱える人たちを差別してはならない。尊重し共に生活していこうという考え方であり、世界じゅうで広がっている。これは人権の尊重、平等社会を根底とするテーマであり、黒人差別反対運動など同じ潮流と言える。