その代表的な業界である建設業はどうか。建設業の中堅企業の生産性は614万円で、全業種平均の457万円より上。小規模事業者の生産性は406万円で、これも全業種平均の342万円を上回っています。データを見れば、大企業が搾取するから生産性が低くなるという説は何のエビデンスもない暴論であることがわかります。そもそも、日本の生産性が低い原因は、下請けの搾取が少ないと言われているサービス業にあります。

中小企業は「小さいことが罪」

では、中小企業はなぜ生産性が低いのでしょう。中小企業は働き方改革が進んでいないから? それともICT化が進んでいないから?

どれももっともらしく聞こえますね。実際、そのように考えて中小企業に働き方改革やICT導入を勧める評論家は少なくありません。

しかし、こうした議論は原因と結果を混同しており、ミスリードです。中小企業の生産性が低いのは、非効率的な働き方を正そうとしたところで解決しません。残業が多くなったりICT化が遅れたりしているのは、原因ではなく結果です。中小企業は他に原因を抱えており、それが非効率的な働き方を引き起こしているのです。

その原因とは、ズバリ、企業の規模そのものです。中小企業は、小さいがゆえにさまざまな問題を引き起こし、低生産性を招いています。

難しく考えなくても、頭を少し使えばわかります。日本の小規模事業者は約305万社で、全体の84.9%を占めています。この305万社の1社当たりの従業員数は3.4人です。その規模の会社で、ビジネスにITを活用できるでしょうか。ビッグデータを分析したくても、そもそもデータがビッグではないし、データサイエンティストを1人雇うこともできません。規模が小さいままでは逆立ちしても、人材や資源を集められないのです。

中小企業こそ、働き方改革を進めるべき? 理屈はわかりますが、この主張には、従業員3~4人の会社でテレワークの設備投資ができるのかという視点がまったく抜けている。現実問題としては、器が小さいままでは業務にICTを導入することもできません。生産性のボトルネックは、企業規模なのです。

ちなみに今日本で起きているネガティブな現象の多くも、中小企業が多いことによって引き起こされています。

例えば日本は女性役員のいる会社が圧倒的に少ないですね。その背景に女性差別がないとは言いません。しかし、仮に差別意識がなければ、女性役員数は男性並みに増えるのでしょうか。私は無理だと思います。3~4人の会社が女性を雇うのは非常に難しい。1人が産休・育休に入れば、戦力が3分の1~4分の1ダウンすることになるからです。(図②参照)

生産性と女性経済参加度