中小企業の問題と言っていい

かわりに何が大きな影響を与えているかと言えば、企業数で99.7%、従業者数で68.8%を占める中小企業です。日本では何かと大企業が批判の矢面に立たされますが、数字を見る限り、日本の低生産性はむしろ中小企業の問題と言っていい。(図①参照)

生産性と20人未満の企業で働く人の割合

データを使ってさらに確認しましょう。企業の生産性は、企業の付加価値を従業員数で割って算出します。日本は統計を毎年きちんと取っていないので1年の誤差がありますが、15年の付加価値と16年の従業員数から計算すると、大企業の生産性は1人当たり826万円。それに対して中小企業は420万円。ほぼダブルスコアで大企業の圧勝です。中小企業のほうが生産性は低く、その数が多くを占めていれば、当然、国全体の生産性も低くなる。誰でもわかる理屈ですね。

このことは国際比較の統計からも読み取ることができます。中小企業の定義は国ごとに異なるため、ここでは従業員20人未満の会社を物差しにします。そのうえで20人未満の会社で働く労働者の比率と先進国の生産性との関係を分析したところ、相関関数は0.93と、非常に高い数値が出ました。統計上、0.9というのはほぼ完ぺきな相関を意味します。中小企業が多いほど国の生産性が低いという関係性は、ファクトとしてはっきり表れています。

日本の低生産性の元凶は中小企業にあり──。このように指摘すると、なぜか怒り出す人がいます。「自分が知っている中小企業の社長はすごい人だ」「優れた技術を持つ中小企業をテレビで紹介していた。馬鹿にするな」というわけです。

たしかにグローバルで戦えるような素晴らしい技術を持つ中小企業もあるのでしょう。しかし、それはエピソードベースでしかなく、反論のエビデンスとして弱い。仮にそうした会社が10~20社あったところで358万社の中小企業部門の大勢に影響はありません。ところが日本ではごく一部の事例を一般化する傾向があって、「中小企業は日本の宝だ」と捉えてしまう。これでは真実を見誤るだけです。

中小企業の生産性が低いのは大企業に搾取されているからだというのも、エピソードベースのごく狭い見方です。大企業に泣かされている下請けの話を井戸端会議レベルで聞いて、さもすべてがそうであるかのように錯覚しているのです。

これは簡単に統計で確かめられます。大企業による搾取が中小企業の低生産性の主な原因なら、下請けや孫請けの階層が多い業界ほど中小企業の生産性が低いはずです。