全日空の東京客室部は羽田空港内のビルにある。そこに所属するキャビンアテンダント(CA)は約2300人。全CA(約4600人)の半数は羽田空港を基地として全国へ飛んでいる。

CAたちは乗務前に必ずプリ・ブリーフィングと呼ばれる朝礼を行う。参加するのは同じ機に乗るCAたちで、小型機なら6人、大型機なら10~12人が1単位となる。朝礼の場所は東京客室部のフロアだ。全長110mにもなる広いフロアには十数台もの会議テーブルがずらっと並んでいる。そこへ出発前の身だしなみを整えたCAたちが次々と現れ、短時間の朝礼を済ませた後、機(シップと呼ぶ)へ向かう。羽田からは1日に200便ものフライトがあるから、会議テーブルはCAたちの朝礼でつねに埋まっている。大勢のCAがフロアを埋め尽くす様子は圧巻だ。CAの朝礼は日本でもっとも華やかな朝礼と表現することができるのではないか。

ただし、見た目は華やかだが、内容、雰囲気は少しも浮かれてはいない。
元はチーフパーサーで、現在は広報室に所属する二ノ宮恵子さんは朝礼の目的をこう話す。

 「何といっても安全意識の高揚が目的。セーフティ・ファーストなのです。CAは接客することだけが仕事と思われていますが、それ以前にお客様をお預かりする航空機の乗務員なのです」

朝礼は5分から10分ほどの短時間で進行する。内容は次の通り。

向かいの席に座ったCA同士、爪や口元、襟元、足元を確認し合う。皆、厳しい目つきだ。

向かいの席に座ったCA同士、爪や口元、襟元、足元を確認し合う。皆、厳しい目つきだ。

(1) 携行品および身だしなみの確認
(2) フライト情報の共有化
(3) 安全についてのブリーフィング
(4) 注意事項の伝達
(5) 乗務前体操

注目すべきは(3)だ。情報の伝達だけではない。司会役のチーフパーサーが「急減圧したとき最初の行動は?」などと新人に問いかけ、正しい答えが返されるまで質問を繰り返す。CAの朝礼は張り詰めた雰囲気で行われている。

(尾関裕士=撮影)