全日空キャビンアテンダント(CA)の朝礼には3つの特徴がある。
1つ目は身だしなみをお互いに厳しくチェックし合うこと。CAは髪の毛を染めてはいけないし、長く垂らしてもいけない。口紅の色の濃さまで決められている。朝礼では対面する相手の姿を上から下まで眺めて、「口紅が少し薄いです」など、遠慮なく指摘する。「同期だから、友人だから」と馴れ合うことなく、びしびしと指摘するのだ。
2つ目の特徴は安全意識を徹底するために、口に出して確認すること。出席者は司会役のチーフパーサーが伝えた注意事項をすべて手帳に書きこむ。そして、メモした後は全員で口に出して読み合わせをし、注意事項を確認する。
広報の二ノ宮恵子さんは「どんなことでも口に出して確認します」と教えてくれた。
「注意事項を黙読しただけでは頭のなかに入りません。口に出すことで身につくのです。鉄道の方たちが指差し確認をやりますが、私たちも同じです。機内でも指差し確認をしています」
3つ目の特徴は乗務前の簡単な体操だ。これは、他社の朝礼でも取り入れるといいのではないか。朝礼に割く時間は5分から10分と短いので、時間がないときは機内に移動してから行う。
「CAには腰痛の人が多いので、乗る前にストレッチをします」(二ノ宮さん)
乗務前体操は全日空の草創期から連綿と続くもので、制服姿の彼女たちは手足を伸ばし、腰を回してから仕事に臨む。
真剣な表情でストレッチに励むCAを見ていて「大変な仕事だな」と感じた。思えば彼女たちは上空約1万mで乗客の安全を守っている。しかもサービスをしながら微笑みを忘れない。CAは華やかな憧れの職業ではあるが、肉体と神経を酷使する仕事でもある。
(尾関裕士=撮影)