「部屋がどれだけ片付いているかがわかる」
「新しい生活様式」という名にふさわしいオンラインお見合いだが、体験した男女それぞれの感想を聞いてみると、前述のような共通認識だけでなく、捉え方の違いも浮き彫りになった。
「対面形式よりも緊張しなかった」というのは男女共通だが、女性は「部屋の様子が分かってよい」「身なりや部屋がどれだけ片付いているかを見て、違和感がなかった」など、相手の生活まわりの情報を得たことに満足する声もあった。
一方、男性はどうか。「相手の顔がよく見える」という声が多かったほか、「対面だと相手をリードしなければいけないと思っていたが、オンラインだと会話だけに集中できる」という意見も聞かれた。リードすることへのプレッシャーを避けたい男性と、生活する上で価値観にズレがないかを把握したい女性、双方にとってオンラインお見合いが効率的な方法であることに変わりないようだ。
しかしながら、IBJの椎名さんはオンラインゆえのデメリットも指摘する。通信環境によっては接続が悪く、やりとりにタイムラグが発生することも。また、テーブルを挟んでの対面よりも顔がよく見えるので、笑顔やリアクションをいつも以上に意識することが大事だと仲人からアドバイスをしたり、お見合い前に接続状況をテストしたりしているという。相手を知ることに注力できるのはいいが、裏を返せばお互いのコミュニケーションスキルが問われる場面でもある。リラックスできる自宅だからとはいえ、身なりや言葉遣いに気を抜くのは禁物だ。
「結婚したいが、恋愛は面倒くさい」若い世代
ここまでいろいろ話を聞いていると、一つの疑問が浮かぶ。日本では50歳まで一度も結婚したことのない人の割合を指す「生涯未婚率」が年々増加しており、内閣府の推計では2020年で男性が23.4%、女性が14.1%に上る。結婚しない人が増える一方、オンラインお見合いや婚活パーティーなどの“出会いの場”に人が集まるのはなぜなのか。
「マッチングアプリの普及も含め、出会いの機会が増えたことは事実です。また、実際にアンケートをとると『結婚したいが、恋愛するのは面倒くさい』『知り合っても関係の深め方が分からない』という人が今の若い世代には増えています。結婚相談所では仲人がいるので、結婚願望のある方のためには第三者の存在がこれから大事になってくると思っています」(椎名さん)
結婚相談所の初期費用の相場は15万~20万円ほど。月額数千円で利用できるマッチングアプリも多数あるが、結婚相談所が求めるような独身証明書や収入を証明する資料の提出は不要な場合が多く、不倫の出会いの場となっていたり、学歴や年収を詐称したりしているケースも少なくない。結末がどうなるのか分からない恋愛を繰り返すより、自分の希望に沿う相手と確実に結婚できるならと、先行投資する人がいるのも納得できる。
オンラインお見合いでの「仮交際率」が上がった背景には、オンラインという手軽さに加えて、背中を押してくれる仲人の存在があったのだろう。