「『考え直しなさい』といわれました。東大に合格できるのは小さいころから勉強だけに集中できる恵まれた家庭の子女だけと、そのときの僕は思いました。でも、想定外のルートから東大に入るやり方だって絶対あるはず。だったら僕がそれを証明してやると、逆にヤル気が湧いてきました」
しかし、現役で合格とはいかず、「宅浪」で捲土重来を期すことになった。予備校に行かなかったのは経済的な理由だけではなく、「教室でライバル30人と足並みを揃えるよりも、自分のペースとやり方で勉強したほうが効率がいい、と思ったからです」という。
お金をかけずに非進学校から東大に合格する秘訣
では、永見さんは宅浪時代、いったいどんな勉強をしていたのだろう。
「量もそうですが、それ以上に重視したのが勉強の質です。たとえば数学は、すぐに解法が浮かばないときは先に解答を見て、なぜこの定理が使われているか、解説の行間を読むことに時間をかけました。そこさえ理解できれば後の計算は省いていいし、解法は他の問題にも転用できるので、数をこなすより短期間で力が伸びるのです」
1人だと1年間モチベーションを維持するのが大変な気もするが、この点も永見さんは対策を立てていた。
「浪人中は一日を有意義に過ごそうと、勉強以外の食事、運動、睡眠などにも気を配り、体と精神の状態を常に安定させました。模擬試験の点数が悪くて落ち込むようなこともない。予備校の先生が作った問題が東大の過去問より質が高いはずがなく、過去問さえ解ければいいと割り切ったのです」
しかし、毎日家にいて光熱費を使うことだけは心苦しく感じていた。それで夏場はなるべく図書館で勉強するなど、節電節水を心がけていたそうだ。
こうして翌春見事に東大合格を果たした永見さんに、お金をかけずに非進学校から東大に合格する秘訣を尋ねると、「自分には何が足りないか、なぜ間違ったのかを突き詰めて問い、その対策を自分で考えられる人なら、可能性は大いにあると思います」との答えが返ってきた。この言葉に勇気づけられる受験生は少なくないはずだ。