レナウンはなぜ時代に乗り遅れたのか
一方、拡大を続けているのがネット通販(EC)市場です。経済産業省のデータによると、ネット通販の衣料・服飾雑貨などの市場規模は18年の市場規模は1兆7700億円と、08年の730億円と比べて、約1兆7000億円増加していることになります。百貨店の衣料品の売上高と比較すると、まるで、鏡で映したかのように真逆の数字となり、アパレルはECの台頭で、ここ10年で明らかに業界変容が起きたのです。レナウンのようにこの10年間に消費行動に合った販売戦略を打ち出せなかった企業は淘汰される結果となったのです。
レナウン自体もこの業界の変化を当然、理解しており、戦略の立て直しをはかっています。にもかかわらず、なぜ、日本のファッション産業を牽引してきた名門企業は変化に対応できなかったのでしょうか。レナウンは10年に「中国のLVMH」とも称される山東如意の傘下となっています。中国進出をかけて、10年前に大きく舵を切っていました。レナウンのカジュアルブランドを扱う店舗を10年間に中国で、最大1000店舗出す計画を立てていましたが、実際は100店舗にも届かず14年に撤退し、中国進出を失敗しています。
リストラにより人材難に陥った…
さらに、レナウンは山東如意グループの傘下後、40以上あったブランドを半分以下にするなど不採算事業の整理を進め、「ダーバン」「アクアスキュータム」を主力ブランドとして注力しましたが、販路である百貨店向けが低調で、厳しい経営が続いていました。13年に山東如意の子会社となり、人員削減やブランドの統廃合、資産の売却を行いながら起死回生を見計らっていましたが、リストラを続けてきた社内に、アパレル業界の激変に対応するための施策を打ち出せる人材は残っていなかったのです。
レナウンは、営業利益の赤字拡大が続き、18年は25億7000万円の赤字、19年には79億9000万円に赤字拡大し、最後は、コロナの影響により、主力の百貨店ブランドの販売が落ち込んだことと、山東如意子会社との原材料の販売取引において売掛金の回収が滞り、53億円の貸倒引当金を計上したことがとどめと刺した格好になっています。
本気で再建する気のない親会社。ECの展開などを自力での施策を展開できるうちに、戦略を立てることができずに、心ないM&Aの相手にすがってしまった。民事再生法の適用申請自体も、山東如意は難色を示し、結局、保険業務を行う子会社・レナウンエージェンシーが債権者としてレナウンの民事再生法適用を申請しています。