日本唯一の「変革クリエイター」を名乗り、企業・自己改革をテーマに講演活動をしている吉川隆久さん。
かつての肩書は、メガバンク系列シンクタンクの研修事業部長。前職では取引先向けにセミナーを企画、運営する仕事を担当していた。講師は外部の講師派遣会社から招いていたが、取引先からの依頼で自身が演壇に立つこともあった。
「もともと人前で話すのは苦手でしたが、やってみたら意外にうまくいき、参加者からも『話を聞いたら元気が出た』とお褒めの言葉をいただきました。それが嬉しくて、退職後はプロ講師になりたいと考えるようになりました」
まず趣味のゴルフをやめ、週末と平日の毎朝4~6時を読書に充てた。講師として活躍するには、自分を磨くことが何より重要だと考えたからだ。その結果、当初目標とした年間500冊を大きく超えた800冊を読破。本から仕入れた事例に自身の経験を踏まえた自分なりの解釈を加えて、講演で使うネタを蓄えた。
また在職中から講師派遣会社に登録。業務の一環として講演を続けたところ、いつしか登録講師5000人中、ランキング11位の人気講師になっていた。
「登録講師5000人のうち、実際に講演の仕事があるのは約1000人。さらに年間100本以上講演を抱える講師は、100人前後しかいません。その中で11位に入ったことで、プロ講師としてやっていく自信ができました」
退職は56歳のとき。定年まで兼業で講師業を続ける道もあった。バブル崩壊や銀行再編を経てピーク時より給料は下がっていたものの、安定した収入は魅力だった。ただ、自身の講演テーマが背中を押した。
「人に変革を説くのに、自分がリスクも取らずに安全圏にいたら、言葉に迫力がないでしょう。人の心に訴える講演をしようとしたら、まず自分が変革しなきゃ」
独立後は奈良の自宅兼オフィスを拠点に、全国各地を飛び回る毎日。講演回数は年間150本に達する。退職直後は夫婦2人がなんとか暮らしていけるレベルだった収入も、いまでは銀行マン時代を上回ったという。
「変革というテーマは、業種業界、役職や世代を問わずニーズがある。ありがたいことに、講演を聞いて自己改革の意欲が湧いたというお手紙をいただいたこともあった。これからも声がかかるかぎり、講演を通してみなさんに元気を届けたいですね」