また、怖さや不安を感じると、つい情報を検索し続けてしまいますが、リラックスしたいときは、インターネットやマスコミなどからの情報収集を、信頼性のある必要最小限のものに留めることも大切です。危険に関する情報は、記憶に残りやすく、緊張状態につながります。

私たちに「記憶」という機能が備わったのは、危険な場所や生物を覚えることで生存確率を高めるため。危険情報を仲間に知らせておけば、集団としての生存確率はさらに高まるため、言葉の発達にもつながったと考えられています。

危険に関する情報は、多くの人に共通する関心事で、「入手すると人に伝えたくなる」という心理が働きます。

緊急かつ重要な情報は伝える必要がありますが、不確かな情報であっても「念のため」「とりあえず伝えておこう」と思ったり、「怖さを人にもわかってほしい」といった心理が働き、かえって拡散されやすくなります。

災害時に嘘の被害情報や対策法、いわゆるデマが出回ってしまうのも無理のないことです。

災害時のデマは、善意からの拡散である場合も多く、判断や対処の難しさが伴います。まずは、とにかく情報の出元を確認することが大切です。友達からの情報であっても、その情報元の信頼性を確認します。友達を疑うのは気が引けるかもしれませんが、人ではなく情報の信頼性を疑うことですので、冷静に危険回避の方法として実践していただければと思います。

トイレットペーパーは、なぜ消えた?

私たちは、リスクが間近に迫ると、なんらかの対処となる行動を起こしたくなります。この傾向から引き起こされる行動として、災害時の「買いだめ」があります。

「危険に対する不安」に「必要なものが手に入らなくなってしまう不安」がプラスされ、行動力が大変高まります。また、多くの人が買いだめを始めるので、「みんなもしているから」といった集団心理も働き、ますますエスカレートする結果に。買いだめは自然災害ではありませんから、人力で混乱を防ぐことが可能です。1人でも多くの人が「巻き込まれない」ことが大切です。

そのためには、まず自分が最低限必要な物と量を正確に知ったうえで、1週間分、1カ月分、3カ月分などの単位で、平時から無理なく少しずつ備蓄しておくことが効果的です。シャンプーなどはボトルに使い始めの日付を書いておくと、1本でどのくらいの期間もつかが正確に把握でき、安心できる分だけを合理的に備蓄できるようになります。

正確さや合理性は安心材料になりますから、買いだめ現象が起きたときも、心穏やかに過ごせますし、巻き込まれたり騒動に加担したりすることも避けることができます。