偏差値は30台後半から40台前半。東大合格者は歴代ゼロ。そんな静岡県の私立高校で、初の東大合格をめざす挑戦が始まっている。名付けて「リアルドラゴン桜プロジェクト」。講師を務める東大4年生の西岡壱誠さんは「僕も高3の模試は偏差値35でしたが2浪の末、東大合格できた。勉強で自分を変えられることを教えたい」という――。

※本稿は、「プレジデントFamily2020春号」の記事を再編集したものです。

昨年4月、静岡・誠恵高校の大講堂で、全校生徒らを前に講演する東大生の西岡壱誠。
撮影=黒坂明美
昨年4月、静岡・誠恵高校の大講堂で、全校生徒らを前に講演する東大生の西岡壱誠さん。

「勉強が苦手な子が集まる高校」が本気で東大合格を目指している

「自分の人生はそこそこでいい。頑張るのは苦手だし、自分には何の可能性もない。そう考えている人が多いかもしれませんが、今や『そこそこ』の人生もつかめない可能性があります。入試や就職活動で、競争に勝たないと生き残れない。そんな社会を考えたことがありますか?」

東京大学4年の西岡壱誠いっせい(23)が、大講堂の壇上から問いかけていた。昨年4月上旬、相手は静岡県の私立誠恵せいけい高等学校の、全校生徒約460人と教職員。同校は偏差値30台後半から40台前半で、「勉強が苦手な子が集まる高校」とも言われる。一見すると、おとなしそうな子たちが多い。

西岡は、将来は国内労働者の49%がAI(人工知能)か、ロボットで代替可能になるという推計などを紹介していく。彼自身の暗い過去も率直に語った。

講師は「高3の模試が偏差値35」で2浪の末に東大合格

「僕も小・中・高と学年ビリで、ずっとイジメられていました。高3の模試が偏差値35。先生から『お前、このままでいいの?』と聞かれ、『これが僕にお似合いの人生だ』と答えて、ぶん殴られたこともありました」

西岡はある出会いを機に一念発起。東大合格者が歴代ゼロの無名校から、2浪の末に合格。その後は18万部突破の『東大読書』などのヒット本を執筆し、人気作家としても活躍中だ。

彼の背後で大写しになっているのは、人気漫画『ドラゴン桜』の主人公・桜木建二。弁護士として落ちこぼれ高校に関わり、数々の受験テクニックと名台詞で生徒の心に火をつけ、東大合格へ導く物語だ。西岡は、同漫画に勉強法などを情報提供する、東大生チーム「東龍門」プロジェクトのリーダーでもある。

実は、西岡の講演は、東大合格者輩出を目指す、誠恵高校の学校改革2カ年計画の始動を記念するもの。

青年漫画誌「モーニング」で連載中の『ドラゴン桜2』を導入教材に、生徒に勉強の楽しさや意義を伝え、オンライン学習サービス「スタディサプリ」(以下、スタサプ)で、勉強を習慣化させる。

スタサプは、人気講師の講義動画をスマホで視聴できる。しかも到達度テストで課題を知り、動画やテキストの復習などで克服できる仕組みだ。

さらに西岡らの指導を加えて東大合格者輩出を目指す。同校の学校改革に漫画のストーリーを重ね、西岡が桜木の役割を担う。漫画×オンライン学習サービス×東大生による「リアルドラゴン桜プロジェクト」(以下、RDP)だ。

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