千葉県浦安市と神奈川県厚木市がトップ

まずはトップ100にランクインした自治体を見ていく。1位は千葉県浦安市と神奈川県厚木市(平均年収765万円)、つづく3位は千葉県印西市だった。自治体による格差は大きくはないものの、上位には財政力のある関東近郊の都市圏が並ぶ傾向が強いとわかる。上位10自治体には東京・千葉・神奈川・埼玉など首都圏と県庁所在地の自治体が目立つ。

一方、都心かつ国の心臓とも言える東京都庁の職員の平均年収は721万円と、23位にランクイン。トップとの差はおよそ45万円だ。都庁の職員は他の自治体と比べて特別に給与が多いわけではなく、その差は「地域給的手当」などの手当の支給額によって生まれている。なかでも地域手当の目的は物価調整が主であり、物価の高い都会ほど支給額が多くなる。全国平均が1万2000円程度のところ東京都の支給額は6万7000円ほどと、大きな差があることがわかる。

さらに地域手当の金額は時間外勤務手当(残業代)やボーナスにも直結するため、都庁職員の収入は他と比べて圧倒的に多い。これらの手当も含めてもちろん高水準ではあるが、課題も多い。地域手当が高いことはすなわち、生活コストも高いことを表す。金額が大きいからといって、単純に他の県庁にくらべていい生活ができるわけではないので注意が必要だ。

年収の低い自治体には、過疎地域の村や島がランクイン

続いて、ワースト100を見ていこう。ランキング上位には島・村などの過疎地域が目立つ。たとえば、1位の島牧村(平均年収381万円)は北海道の漁業が基幹産業となる村である。日本の渚百選に選ばれている江ノ島海岸は瑪瑙めのうなどの鉱物が散見される美しい海岸であり、それを生かした観光業にも力を入れている。8位の姫島村(平均年収462万円)は大分県の北東部に浮かぶ同県内で唯一の村だ。漁業を主な産業とする姫島村では、村民の雇用先を確保するため率先してワークシェアリングを推進している。職員の給与を低く抑え、なるべく多くの職員を雇う取り組みである。

ランクインした多くが都市部から離れた地域ではあるが、それらの地域の一般的な企業の平均よりも水準が高い。さらに、平均給与が各自治体の平均年齢に大きく左右されている点は留意すべきだろう。一般的に年功序列型の賃金体系が用いられている地方公務員であれば、年齢が高いほど給与も高くなる。東京や大阪、名古屋などの都市部は総じて物価も高く、何かと出費のかさむ都心暮らしに比べれば生活コストは安く済む地方都市。平均年収ワーストランキング上位にランクインしている自治体の公務員のほうが生活にゆとりがあるというケースは存外少なくなさそうだ。時間のゆとりは心のゆとりにも繋がるだろう。

まさに、コロナと直面している今のわれわれが見直すべきは「ゆとり」ではないだろうか。家でひとりきりのテレワークで仕事をなんとなくこなし、たまの外出では人との対面を気にしておどおど過ごす毎日は精神的にかなり厳しいものである。そんなわれわれが日々足を運ぶスーパーや生活雑貨店では、めまぐるしい接客に疲れ果てた店員が「不要不急とはなんなのだろうか」と疑問を抱いた顔を覗かせる。われわれの多くの生活軸が仕事と寝食の応酬のみだったことが浮き彫りとなっている。毎日やるべきことに追われて自分の時間が持てない、一日があっという間に過ぎてしまうという仕事熱心な人が日々何をして過ごせばよいかわからなくなるという、ついぞ予想もできなかった事態にいることをわれわれは自覚すべきなのだ。

こんな時こそ、自分の興味関心が湧くものを探し出すことが重要だ。なかには、かつて夢中になったものを仕事のスキルアップには必要のない趣味だと、過去に捨て置いた人もいるかもしれない。殺してきた自分の感情と向き合うときがきたと捉えるとよいだろう。自分の不安を「仕事」という一つの対象に押し付けず、没頭できる趣味といった複数の依存対象を持つことによって心も軽くなるだろう。鬱憤うっぷんを晴らすべくむやみやたらに外出をして、断捨離を試みて掃除をすれば、晴れるというものでもないのかもしれない。