すばやい行動をするための「思考」を鍛える

VUCAを生き抜く上で、ビジネスの世界では「アジャイル」がキーワードとなっています。アジャイルとは、「すばやい、俊敏な」という意味の言葉で、もともとはソフトウェア開発における新たな開発手法を表す言葉でした。現在は通常のビジネスでも盛んに使われるようになっています。

「答えのない世の中を生き抜くためには、時間をかけて考えてそれから行動するやり方では間に合わず、まずすばやく思考し、動きながら軌道修正していくことが重要である」

これが、アジャイルの意味するところです。私たちの働き方も、アジャイルがキーワードとなっており、表層的に考えてまず行動することが求められる場面も増えてきました。

「どうせ先が見通せないのであれば、考えることに時間をかけるより、まず行動することで活路が開ける」という論には、一定の納得感があります。

では、今の時代において、考えることよりもまず行動することのほうが本当に重要なのでしょうか。

私たちが目指す未来の働き方は、すばやく成果を生み出すことにあります。

それであれば、複雑で不透明な場面に出くわした際、ただやみくもに「すばやく行動する」よりも、「すばやく行動できる思考を鍛える」ことのほうがもっと重要になるはずです。

なぜなら、すばやく行動できる思考を鍛え身につければ、結果の出ないことに向けて無駄に動き回る必要もありませんし、いざというときにはすばやく行動し、成果につなげることができるからです。

深く考える人は、危機に強い

それでは、答えのない複雑な時代の中で「すばやく行動できる思考を身につける」ためには、何が必要になってくるでしょうか。

それは「表層的」ではなく、「深層的」に物事を考える力を身につけることです。

日頃から常に物事に対して深く考えていれば、さまざまな不確実なことに対する備えに時間をかけることができます。シミュレーションを通して、今回のコロナ危機のように知らないことに出くわしても、成果に向けて短時間で答えを導くことができるからです。

では、常に深く考えるとは具体的にどういうことでしょうか。

深く考えるとは、なかなか難しい言葉です。私も昔、上司から「もっと深く考えろ!」と言われて戸惑った経験があります。「深く考えろ」と言われても、自分としては深く考えているつもりだったからです。それは上司の主観であり、なぜ深く考えていないと断言できるのだろうと思いました。

それ以降、深く考えることをわかりやすく一般化できないかと考えました。その結果、辿り着いたのは、「全体像とフレームワーク」というものです。