「いま打て!」と試合中に言っても意味はない

やらされる練習よりも、自発的に取り組む姿勢が大事だという信念がある。

「その生徒に合ったやり方を提示することができますし、相談にも乗ってやれる。だけど、野球をするのは本人です。やったらやったぶんだけのことが返ってくる。失敗しても、何かを得られると思う。試合中に監督がベンチから、『いま、打て!』と言っても意味はない。生徒に力をつけさせるしかないんです。試合に勝ったら、生徒のおかげです。監督の力なんて、たかが知れてます」

自分の頭で考えろ、自主的に取り組めと言われても、ずっと指導者に服従することを強いられてきた選手には難しい。上林は思い切った策に出た。

アルバイトで練習の効率アップ

「冬の間、練習休みを1日増やして、33人の部員を3つのグループに分けて、ローテーションでアルバイトをやらせました。自分で履歴書を書かせて。社会勉強になるし、お小遣いが増える。すると不思議なことに、練習の効率まで上がりました。少ない人数でたくさん練習ができて、早く終わることができました」

学校とグラウンド以外の空気を吸い、大人たちと接することで選手は変わった。野球も大事だが、それがすべてではないと生徒たちは気づいたようだ。

「その会社の人にかわいがってもらいましたし、お金を稼ぐことの大切さを学んだようです。生徒に『どっちがしんどい?』と聞くと、『練習のほうがいいです』と言う。それまでは練習がつらいと言っていたのに、『どっちやねん?』という感じです(笑)。グラウンド以外の時間の大切さをわかってくれればいい。そこがいい加減な人は、野球もいい加減でしょうから」

▼編集部おすすめの関連記事
なぜ高校野球では「暴力をふるう監督」が生き残っているのか