特にヒットしたのは『整理整頓』。続いて2016年4月に出した『時間の使い方』『勉強が好きになる』もシリーズの上位を占める。旺文社は個別の部数は公表していないが、シリーズ刊行から1年足らずで累計発行50万部、2017年5月には100万部を超えた。

親の願望がつまった本を、なぜ子どもが読もうと思うのか。

このシリーズの特徴は、全体的にくだけたトーンで、絵柄がコミカルなことだ。学習まんがに似ているが、歴史ものや伝記ものに比べると、ストーリーはギャグが多めで、キャラクターはかなりデフォルメされている。子どもたちが最後まで読み切れるための工夫だ。

「優秀な子だけでなくおっちょこちょいや、親に言われたことをなかなかやらない怠け者キャラも用意して子どもが感情移入しやすくし、宇宙人が登場するといった場面設定を用意して興味を引くようにしています」(旺文社・廣瀬由衣氏)

子どもに「なんかおもしろそう」と思ってもらえる仕掛け

学習参考書づくりでは「正確さ」「信頼感」が第一に求められるが、このシリーズが重要視しているのは子どもたちに「おもしろい」と思ってもらえるストーリーづくり。狙いは、テーマに興味を持って読むというより、子どもたちが「なんかおもしろそう」「マンガだし」と感じてもらうことだ。

たとえば本のカバーは、作中のマンガから抜き出したイラストが浮き出て見えるよう特別な加工を施してある。見た目からして、派手なのだ。

興味を持って手に取り、母親に「○○しなさい」と叱られている主人公に共感しながら読み進めていくと「へー、だから勉強したほうがいいのか」と気付く。もっとも、実用書は一度読んだくらいでは、頭では理解しても行動に移すまでにはなかなかいかない。

しかしこのシリーズでは、子どもたちに繰り返し読んでもらえるように、「本筋とは関係ないところでふざけているキャラクターがいる」「よく見ると小ネタが描かれている」といった仕掛けがいくつもある。

ある巻で出てきたキャラクターが別の巻の端役で出てくるといった仕掛けもあり、巻ごと(テーマごと)の読者だけでなく、シリーズとして楽しんでもらえる要素も盛り込んだ。

一方、親からは「大人もできていないようなことの実践方法が平易にまとまっている」「自分も勉強になった」という声も多く寄せられているという。親と子、それぞれに満足を与えるつくりになっているのも、このシリーズがヒットした要因のひとつだろう。