好奇心を全開にして情報に向かい合う

一方、私は情報が重要であることをあらためて理解しました。優れた考えはつねに、正確で、そして潤沢な情報に裏打ちされているのです。

情報をできる限り集め、考え抜くことを、いっそう心がけるようになりました。自分の好奇心を全開にして、そこに引っかかってくる情報に、最大限の興味を抱いて向かい合う。いまでもそれがつねに、私のやりかたです。

先日などは、社員たちと、サッカーのヨーロッパ選手権で優勝したスペインチームの分析をして、大いに盛り上がりました。これなどは、組織論を学ぶための、かっこうの教材でした。

また、もう15年前から、異業種の人たちが三々五々集まる飲み会に参加していますが、これなども私の好奇心を充たすのにぴったりです。当初は勉強会のつもりではじまったのですが、いまでは、50人ほどが2カ月に1度集まって、わいわいやっています。メンバーにはさまざまな人がいます。官僚も、ビジネスマンも、あるいはホテルマンも。

会場も多種多様で、餃子屋などでやれば、割り勘で3000円かからずに済んでしまいます。話題もいろいろです。最近の会では、ガソリン価格が自動車メーカーに及ぼす影響を巡って、侃々諤々の議論が沸騰しました。

好奇心は全ての情報を受け入れ、自分のなかに貯め込みます。ビジネスでチャレンジする局面になれば、先に申しましたが、学思の方法で、手にした情報を考え抜きます。

一見すると無駄の積み重ねのようですが、最後には、何らかの収穫を得られるものです。

それにしても、このごろ気にかかるのは、なににも興味や好奇心を持たない人がいることです。そういう人に関心を持たせるのは非常に難しい。会社組織のなかで通常のコミュニケーションができない、あるいはしない人々にどう対するか。大きな問題です。

(枝川公一=構成 芳地博之=撮影)