国は外国企業との協業をサポート
ビジョンを明確に描くことができ、具体的にイスラエルスタートアップと何を目的に組みたいかがはっきりしているのならば、自社が持つ具体的な製品や技術を紹介し、グローバルな販売網や特定分野の生産技術などの自社の強みをアピールして、イスラエルのスタートアップに対して広く協働を求めるというやり方も可能だ。
イスラエル・イノベーション庁では、こうした外国企業とのコラボレーションをサポートしており、同庁のホームページには、外国企業によるイスラエルのスタートアップに向けた提案募集の告知が掲載されている。
また、現地でイスラエルのスタートアップと、新事業のアイデアを開発するイベント「ハッカソン」を実施するなどして成果を上げている例もある。
村田製作所は、センサー通信モジュールの活用をテーマにハッカソンを実施し、そこで優勝したThe Elegant Monkeysと実証実験を経て協業、出資を行った。現在は、両者で開発したAIソリューションの事業化に向けて準備を進めている。
粘り強く、熱意がある「チャンピオン」はいるか
このような、イスラエルスタートアップと日本企業の商習慣や文化の違いによるハードルを超えるためのカギは、いわゆる「チャンピオン」の存在だ。
プロジェクトの成功を信じ、ねばり強く、強い熱意を持って推進しようとするチャンピオンが、双方——特に日本側——にいるかどうかが成否をわけるのだ。
チャンピオンの必要性は、イスラエルのスタートアップと日本企業の連携に関与した経験のあるイスラエル、日本双方の人たちから繰り返し指摘された。
特に日本の大企業とイスラエルのスタートアップという組み合わせを、成果に結びつけるためのチャンピオンには、どのような資質が必要だろうか。
まだ確立されていない、市場可能性も不確定な新しい技術を見極めるのは、そもそも非常に難しい。テキストを読んだり、セミナーに行ったりすれば、ある程度の知識や情報を得られるかもしれないが、技術のスタートアップの盛衰は激しいので、常に世界の状況を見極める目を養うことが必要だろう。