「逮捕者が出てからでは遅すぎます」

私の知人がタイで起業していまして、1年ぐらいで覚醒剤乱用者が現地の従業員にいたことが分かりました。調べてみると、多数の乱用者が存在。揚げ句の果てには密売も会社の中で行われていたと……。ひどい状態が潜んでいました。

これは昨年の話で、知人から「何とかできないか?」と悲壮な相談を受けました。こういった現地での薬物問題に悩んでいる日本企業は少なくありません。

——逮捕者が出てからでは手遅れですね。

薬物は自分の健康をむしばむばかりか、最悪の場合、家族や職場などをも破壊します。海外は日本よりも薬物が身近にある。ビジネスパーソンの海外赴任や出張時も、その国の薬物事情や関係する法律をしっかり勉強して、理解させなければいけないのです。

瀬戸 晴海『マトリ 厚労省麻薬取締官』(新潮新書)
瀬戸 晴海『マトリ 厚労省麻薬取締官』(新潮新書)

企業によっては、コンプライアンス研修の一環として、「薬物研修会」を行っています。しかし、海外進出の前に、こうした研修をすることはまずありませんね。それでは絶対に不十分なのです。逮捕者が出てからでは遅すぎます。

日本企業は薬物犯罪にもっと危機感を持つべきです。徹底的にリスクの大きさを学ばなければいけない。薬物が蔓延すると生産コストも下がりますし、執務環境や労働環境をとても悪化させてしまいます。

社員に薬物問題を理解させ危機意識を持たせることは、「人材育成」の一環だと思っていただきたい。これは優先順位の高い、喫緊の課題だと考えるべきです。

(構成=菅原雄太(プレジデントオンライン編集部))
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