身近なところに「落とし穴」は潜んでいる
——著書では、薬物と無縁の人が知らないうちに事件に巻き込まれるケースが紹介されています。印象的だったのは、恋人気分に浸っている女性に密輸を手伝わせる「ラブコネクション」という手法です。
海外の密輸組織は、さまざまな手法を駆使して日本国内に薬物を運び込もうとしています。「女性の恋心」を利用したケースもありました。
密輸組織のメンバーが、婚活サイトなどで女性と知り合い、言葉巧みに信頼関係を築いていく。恋人気分に浸っている女性に、親切心を利用して、薬物を隠した国際郵便を受け取らせ、国内にいる仲間に回収させるのです。恋愛感情や親切心を利用して、女性が知らないうちに「密輸の片棒」を担がせる手法です。
海外旅行中も注意が必要ですね。渡航先で知り合った人から「この土産、ちょっと日本の友達までを持って行ってくれないか」と頼まれたら、「危ない! 運び屋にされる」とまず疑ってください。海外で逮捕された場合、知らなかったでは、通らないし、済まされないケースもある。中国や東南アジアでは薬物犯罪には死刑制度もありますので、十分に気をつける必要があります。
——昔に比べて外国に行き来する人が増えました。注意点はありますか。
海外に行けば、日本では違法とされている大麻や麻薬性の鎮痛剤などが、一般に使われているという現実があります。旅での開放感から、親しくなった現地の友人に勧められて……。
旅先では気が緩んでしまうのかもしれませんが、そういった安易な考えが、薬物乱用のきっかけになってしまうのです。
海外進出する企業、ビジネスパーソンも要注意
——日本企業の海外進出、ビジネスパーソンの海外出張、転勤や駐在も多いです。
海外でも薬物が厳しく規制されていることは、誰でも理解していると思います。海外進出する企業、ビジネスパーソンは、当然その国の事情や制度、文化、商慣習、治安情勢などを学んだうえで、出張、転勤、駐在に赴くべきだと思います。
問題は、治安情勢や健康問題の中でこの薬物問題をどれだけ意識しているかということです。前提として、日本国内で薬物問題について十分に学び、その危険性やリスクの大きさをまず知ってから国外に出ていってほしい。
例えば、タイについては、中小・ベンチャー企業も含めて日本から5000社ぐらいの企業が行っていますね。私は「日本では薬物が身近に迫っている」とよく言っています、しかし、タイはそれどころではありません。ヤーバ(錠剤型覚醒剤)やアイス(結晶型覚醒剤)、大麻、ヘロイン、クラトムなどの薬物が、前にも、横にも、後ろにもある。「ナイトバザール」でも簡単に手に入るほどです。