ネットやSNSで簡単に手に入る現状

——犯罪とは無縁に思える一般の人が、なぜ薬物に手を染めるのでしょうか。

友人や知人、彼氏から勧められるケースが多いですね。多くはやっぱり好奇心なんですけど、勧められて断り切れなかったとか、「まあ、少しはいいんじゃないか」と安直な考えから入り込む場合が目立ちます。仕事や人間関係のストレスから手を染める人もいます。

入り口は、身近なところにあります。例えばツイッター。「拡散していただいた方に1gプレゼント」「キャンペーン中」という販売広告もあるくらいです。

ある若者がそのキャンペーン中に応募して当たる。当たるとうれしくなるんですね、実際にそれを吸ってみる。結構いいものだ、と無自覚にレビューする……。警戒心が低下している表れなのです。

——インターネット、SNSの影響は大きいですね。

ネットは自分の見たい情報だけを見ることができます。それ以外は眼中に入りません。アメリカの一部の州やカナダなど一部の国で大麻が合法化した国があります。

それなりの事情があっての苦肉の策なのですが、それが誤解され、大麻は無害だとか、そういう誤った情報が氾濫している。これが、危機意識や警戒感を低下させる原因になっていると思います。

未成年の子どもたちにも薬物危機が迫っている

さらに、誰でも薬物販売サイトにたどり着けます。いくつかのキーワードを入れたら、さまざまな販売サイトが出てきますし、あるいは「ダークネット」に入っていけば海外から買うことも可能です。

——簡単に入手が可能、なんですか……。

スマホさえ扱えれば難しいことではありません。例えばツイッターの中にもたくさん販売広告が出ています。それも足がつかないよう、密売人はツイッターから暗号化アプリ「Wickr」とか「Telegram」に誘導していくのです。

2019年3月、京都市内の中学3年の女子中学生が大麻とMDMAを所持していたことが発覚した事件もありました。自宅で暴れていたと報じられていましたが、これにはショックを受けました。沖縄では高校生を含む、未成年者20名以上も検挙され、今年3月には、新潟県で高校生が大麻所持で逮捕されています。

密売人は手口を巧妙化させている

これらは全部ツイッターで仕入れたことが分かっています。ツイッターが入り口となって、密売人がそこにTelegram IDを書いて、足がつかない方に誘導するんですね。

元厚労省麻薬取締官の瀬戸晴海氏
元関東信越厚生局麻薬取締部長の瀬戸晴海氏(写真撮影=渡邉茂樹)

 

密売人は、ITの進化に合わせてすごいスピードで進化しています。そういう恐ろしい事実も皆さんに知ってほしいと思います。

自分の子どものスマホに、そんなアプリが入っていたらくれぐれも要注意です。親の知らないところで、子どもたちが薬物を簡単に手にすることができてしまうわけですから。

ただし、啓発活動が強化され、子どもたちの薬物乱用は減ってきています。しかし、それは覚醒剤についての話で、大麻に関しては急増しています。怖いのは、大麻は「ゲートウェイ・ドラッグ」と呼ばれて、大麻から始めて、より毒性や依存性の高い薬物へと流れていく若者が増加しているということです。