市場関係者が注目するロシアの金保有増加

一方、ロシアも米国による経済制裁で苦しんでいる。そのロシアの金準備が年々増加していることに関心を寄せている市場関係者は少なくない。

基本的な背景は中国と同じであろう。ロシアといえば、国際社会において不透明な部分が多く、また様々な政治的な事件に関与していると見られている。

2018年には、英国で起きたロシア元情報機関職員の暗殺事件にロシア政府が関与していた疑いがもたれている。米国はロシアが化学兵器を使用したと断定し、米国の安全保障に関わるモノや技術の輸出を禁じるという経済制裁を発動している。以前から、ロシア外交官を国外追放し、ロシアの個人や企業を対象に制裁を発動していたが、さらにその対象を貿易にまで広げている。

米国、中国、ロシアの国旗が塗られたコンクリートの壁
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プーチンの政治生命を左右する!?

さらに、ロシア通貨ルーブルの下落も激しさを増している。対ドルで80ルーブルを超える急落となっているのだ。

このような事態が加速すれば、ロシアルーブルの購買力は著しく低下し、国内でのインフレを招く可能性がある。そうなれば、自らの政治生命の延命を目論むプーチン大統領にとって、きわめて不都合な事態が起きることとなる。

国民から批判を受け、大統領職を降りるようなことは、これまでの政治手法からすればあり得ないことである。その意味でも、金を保有することで、自国の資産を守ろうと考えるのは至極当然のことであろう。

その一環として、ロシアは保有していた米国債の保有高を大きく減らしているとされている。2014年のウクライナ危機を受けた制裁の発動開始から米国債の保有を徐々に減らし、2018年にいたっては保有する米国債を8割以上も減らしているのである。

しかし、2016年の米大統領選へのロシアの介入疑惑を理由に、米国はロシアの財閥経営者と参加企業などを対象に、米国内の資産凍結や取引禁止などの厳しい制裁を打ち出した経緯がある。その結果、通貨ルーブルも対ドルで大きく下落している。