時代に合わせて変化する商圏

一昔前は、人が多く定住しているベッドタウンのような街に巨大な施設を建てて、会員を3000人近く募るのがフィットネスジムの主流でした。コナミスポーツやセントラルスポーツなど、マシンはもちろん、プールやスタジオもある規模の大きなジムです。

榎本篤史『東京エリア戦略』(KADOKAWA)
榎本篤史『東京エリア戦略』(KADOKAWA)

ところが、今はそれだけ大きな施設をつくるのは企業側にとって投資が大きすぎる点がネックになりつつあります。プールはある程度の期間で再投資が必要だったりと、せっかく投資した分を回収できても、設備維持のためにまた投資をしなければならず、経営がなかなか厳しいという面があるのです。

その点、エニタイムフィットネスは、マシンを使ったトレーニングだけに特化しています。シャワールームとロッカーを整備し、あとはマシンがあればいいということで、スペースもそんなに使わず、大型施設に比べると、投資額は小さいです。

そのため、ビルの1~2フロアで展開している店舗が多い印象で、ベッドタウンエリアに限らずオフィス街エリアでもよく見かけます。コナミスポーツの店舗数が386店舗ですから、出店しやすい業態だということは間違いないでしょう。

会員になれば、どの店舗でも追加料金なしで利用できるので、休日に自宅の近くでも、平日に会社の近くでも、出かけた先の隙間時間でも、好きなときにどこでも通えます。忙しいけれどリフレッシュしたい、会社帰りに少しでも体を動かしたい、そういうニーズに応える新しいジムの形態と言えますし、都市部でも成功する商圏の広がりを感じます。

サイゼよりモスより店舗数が多いジム

もう1つ、注目したいジムがあります。「女性だけの30分健康体操教室」を掲げているジム、「カーブス」をご存じでしょうか? 実は全国に2000店舗あり、会員数は約84万人にも上ります。

2000店というのは相当な数です。サイゼリヤで国内1000店、モスバーガーで1300店ですから、それより多くの店舗があるということです。もともとはアメリカで誕生した事業で、2005年に日本に1号店がオープンしました。

ただ、これだけ店舗があっても、都会の若いビジネスパーソンの方はカーブスを意外と知らないかもしれません。それは、顧客のほとんどが40~60代以上の女性だからです。ファストフードのような、人口全体を相手にしている業態ではなく、あえて女性だけ、しかも年齢層が40代以上とかなりターゲットを絞り込んでいる。それでこれだけの数を出店しているというのは驚異的に感じます。