ハーバードの卒業式でビル・ゲイツが語ったこと

ハーバードではとにかく、起業家や各界で変革を起こしているリーダーがよくキャンパスを訪れます。授業で教えるだけでなく、大学の外からも刺激を与え、ことあるごとに「世界をよりよくしよう」と煽ります。

私が参加した2007年の卒業式では、ゲストスピーカーとして、ハーバードを「中退」したビル・ゲイツがスピーチをしました。ゲイツはマイクロソフトの話はそこそこにして、貧しい国に住む何百万の子どもたちが亡くなっていることに触れ、こんな問いかけを卒業生たちに投げかけました。

「なぜ世界は、これらの子どもたちをただ死なせることができるのだろうか?」

そして、世界の貧困や不平などと闘ううえで、「バイオテクノロジー、パソコン、インターネットなどの現代で最も重要なイノベーションは、極度の貧困や予防可能な病気での死亡に終止符を打つ機会を与えている」と語りかけました。

東大入試では一切出てこなかった「なぜ」という問い

ゲイツのこの投げかけが象徴するように、ハーバードでよく耳にしたのは「なぜ?」という問いです。

なぜ世界から貧困はなくならないのか?

なぜ社会には不平等が残っているのか?

なぜ世界から戦争がなくならないのか?

なぜ人はさまざまな違いによって差別をするのか?

なぜインターネットが普及しても人々は正しい情報から正しい判断ができないのか?

そして、入学前の受験プロセスから、「なぜあなたはハーバードで、この専攻を学びたいのか?」ということがエッセイで問われるほど、ハーバードでは非常に重要視されます。東大入試では純粋に学力のみが問われ、「なぜ」という問いは一切なかったことと非常に対照的です。