1億円のタワマンが7500万円程度になる計算に
では、資産価格はどのくらい下がる可能性があるだろうか? ところがわが国には、騒音が資産価格に与える影響に関し明確な基準はなく、裏付けとなるデータも存在しない。そこで海外事例を参照してみる。アメリカのコンサルティング会社が1994年に米連邦航空局に提出した報告書によれば、ロサンゼルス国際空港北部における、飛行機騒音による不動産価格は、1dB上昇するごとに1.33%ずつ下落していた。
このデータを用い、環境省が定める「環境基準」(生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準)の55dBをベースとして試算すると、現状は環境基準程度の騒音状態である代官山や白金あたりの資産価格は最大25%、現在60dB程度の大井町駅周辺では最大26%の資産価格下落の可能性がある。1億円のタワーマンションは7500万円程度になる計算だ。
タワーマンションの高層階で、サッシの防音等級がそれほど高くない場合には、下落率はさらに高くなるかもしれない。
こうした懸念に対して国交省は「航空機の飛行と不動産価値の変動との間に直接的な因果関係を見出すことは難しい」と回答をしつつ、各地で説明会を開催するなどのアクションを起こしてきた。筆者はいくつかの説明会に参加したが、とある会場では、担当者に猛然と抗議する地域住民の姿がみられた。複数の反対運動を行う会が結成され、HPや街頭活動を通じて見直しを訴えている。