業界関係者が語る。

「仮に税収が減っても、喫煙による疾病が減り国民医療費が抑制できれば財政には負担をかけない、というのが増税の旗振り役である厚生労働省の言い分です。しかし肺がんや心筋梗塞、脳卒中といった病気も喫煙だけが原因とはいえません。厚労省の目論見どおりに医療費が削減できるとは限らないのです。医療費がさほど減らないとしたら、税収減の負のインパクトだけが残りますよね」

12月に決定する政府の来年度税制改正大綱では、もう一段のたばこ増税を盛り込もうとする動きが出ているという。もし再引き上げが実現すれば、関連業界の混乱や税収減を引き起こすのは間違いない。

たばこ増税の主眼は税収を増やすことではなく、喫煙者を減らし国民の健康を増進することだ。その際の指針となるのが、欧米諸国の喫煙者率やたばこ税の比率である。

先にも触れたとおり、日本の喫煙者率は23.9%(10年)である。これに対して欧米の喫煙者比率は、比率が高い順にロシア39.8%、ドイツ27.5%、フランス26.4%、イタリア22.3%、イギリス21.0%、アメリカ19.8%、カナダ17.9%である(08年)。日本はフランスとイタリアの中間にあたり、特に喫煙者率が高いわけではない。

たばこ税の比率で見ると、今回の値上げで日本は小売価格に対するたばこ税の比率が59.7%に上昇した。ドイツは57.7%、フランスは64.6%、イギリスは61.8%、アメリカ・ニューヨーク市は54.9%であり、税率面でもほぼ欧米並みの“国際水準”を達成しているのである。

たばこ小売業の男性がため息をつく。

「イギリスやフランスが現在の税率に引き上げるまでには10年から20年の時間をかけたと聞いています。日本の増税は性急すぎます」

政府部内の水面下で落としどころの模索が続いている。今後の税制論議を注視していきたい。

(PANA=写真)