フリーバッティングへの取り組み方で好不調がみえる

フリーバッティングへの取り組み方は、各選手それぞれです。ケージに入って初球からいきなり思い切り振るのは、ほとんどの場合が代打を本業とする選手たち。彼らは試合でも1打席勝負であり、もっといえば1球に勝負をかけますから、ケージに入って1球目から強い打球を打ってきます。ほかの選手と比べて力強い当たりが多くなるので、「なんだか調子がよさそうだ」と感じることがありますが、その選手の置かれた背景は考慮すべきでしょう。

撮影=角川新書編集部
読売巨人軍で22年スコアラーを務めた三井康浩氏

スタメンで出る選手たちは、まず反対方向を意識して打っていきます。反対方向から打っていって、最後は強く引っ張ったりするのが一般的なパターンです。

最初に反対方向におっつけて打つときに、少し打球が弱かったりすると「疲れているのかな?」とか、「調子が悪いのかな?」と考えます。そういうシグナルが出ている打者に対しては、なぜ打球が弱いのかスイングをよく見て好調時との差を探します。大抵の場合は、大振り気味になっていてバットが遠回りして出ていたりするので、そういう兆候を発見したらメモを取り自チームへの報告の材料にしていきます。

何度もファウルにしている打者はなにかがおかしい

また、バッティングピッチャーが投げる球は120キロそこそこなので、勢いのない「死に球」に過ぎません。ですから、一流の打者なら10球中10球をスタンドに運べてしまうくらいのボールだといえます。それを何度もファウルにしているような打者がいれば、やはりなにかがおかしいと考えるべきでしょう。

三井康浩『ザ・スコアラー』(KADOKAWA)

バッティングケージからも出ていかないような、チップしたファウルを繰り返すケースは捕手によく見られます。「大丈夫なのだろうか……」とも思いますが、捕手は肉体的な負担が大きく、疲労が出やすいという特徴があるから致し方ない部分もあるのです。打球が前に飛ばないのは、疲労が原因である可能性は十分にあり得ます。ただ、厳しい見方をすれば、プロの選手なのだからキャンプでしっかり身体を鍛え、1年間コンディションを保つのが目指すべき姿でしょう。

フリーバッティングは、選手のコンディションを試合とは別の角度から確認できるいい機会です。球場を訪れる際、少し早めに到着すればその一部を見ることができるところもあります。継続的に見なければ判断がつかないという制約こそあれ、ケージのなかの打者注目してみるのも面白いかもしれません。

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