世の中に居酒屋が繁盛している理由の大半は、サラリーマンが上司の悪口を言うからだと言っていいでしょう。「今日ちょっと寄っていく?」で始まり、「○○部長の話、聞いた?」「何、それ?」となり、上司や会社への批判や愚痴、噂を肴に杯を重ねることになるわけです。

食品偽装、トップの不倫……2008年の主な企業不祥事
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食品偽装、トップの不倫……2008年の主な企業不祥事

そんな流れのなかで、酒のせいでつい軽くなった口が、上司の秘密を知ったことを同僚に匂わせたり打ち明けたりすることになりがちです。あるいは、上司崇拝派の同僚と仕事について議論しているうちに、感情的になってつい口が滑るのもありがちな話。やがて、あなたの言葉は回り回って上司の耳に入るにちがいありません。そして抹殺へ……。

だから、財布の紐を固く締めて、まっすぐ家に帰れと私は言うのです。秘密を知り、喋りたいなあと思った日ほど、真っ直ぐに家路につくこと。自宅で、『家政婦は見た!』の市原悦子みたいに、まあ猫でも相手に思い切り喋ることですね。

じゃあ、ずっと「言わザル」のままでいろと言うのかと、私の忠告に反発を感じる人もいるでしょう。私が言っているのは「ひとまず、ポケットの中に入れておけ」ということです。本当にそれをカードとして使えるときがきたら、ポケットから取り出せばいいのです。そう考えれば、あなたはドラえもんのポケットを持ったようなものです。

携帯のメールにも、すぐ「送信」してしまわずに「保存」しておくという選択肢がありますね。あれと同じです。

大切なのは、ポケットからその秘密を取り出すのは、決定的な場面に遭遇したときに限るということ。上司や会社の側があなたに対して何か決定的なカードを、先に切ってきたときです。秘密カードは保存しておき、いざというときにあと出しすべし。相手より先には切らない。とくにアルコールの勢いで中途半端にそのカードを切ってしまうのは最悪です。

もしカードを切るチャンスが永久になかったら、ポケットの中の秘密はそのまま削除してしまえばいいのです。携帯でも、不要になった保存メールは削除してしまう。あれと同じです。

(小川唯史=構成 澁谷高晴=撮影)