値上げを重ねて駅前での強みを失った

一方、いきステは駅前立地ではこれまで強みを発揮してきた。駅前の好立地を中心に、立ち食い形式によって低コスト・低価格を実現し、それを武器に店舗網を拡大してきた。

だが、度重なる値上げで、売りだった「割安感」は薄れてしまった。2013年の創業当時、リブロースステーキは当初1グラムあたり5円だったが、段階的な価格改定を経て今は6.9円となっている。300グラムで計算すると、1500円から2070円に値上がりしているのだ。

いきステは、今でこそ定量で200グラムからでも注文でき1000円台のステーキもあるが、少し前までは300グラム以上とされ、メニューの大半が2000円以上だった。平均客単価も2000円台と推測できる。この価格帯では、他の外食チェーンのステーキと比べて割高感がある。例えば、ファミリーレストラン「サイゼリヤ」の「リブステーキ」が909円、「ガスト」の「牛リブロースステーキ」は1499円だ。駅前という立地に絞ると、今度はいきステの価格の高さが際立つ。

品質よりも絶対的な価格が重要な顧客層

もちろん味や量が異なるため、いきステが全面的に割高というわけではない。「品質を考えた場合の価格」いわゆる「コスパ」は悪くないケースもあるだろう。だが、ここで重要なのは「品質を考えた場合の価格」ではなく「相場に対しての価格」だ。

もうひとつの「食事としての相場」を考えてみよう。駅前立地のいきステがメインターゲットとするのは、男性のサラリーマンや学生だ。これらの層で一度の食事に2000円以上を簡単に出す人はかなり限られる。つまり、食事としての相場に対しても高いのだ。

この場合に重要なのは、味や量の多さからくる満腹感だ。なぜなら、食費に制限のあるサラリーマンや学生は、支出できるかどうかという絶対的な価格で考えやすいからだ。こうした層は、いくらおいしくても予算を超えた食事には見向きもしない。それゆえに、値上がりしたいきステは選択肢から除外されるようになったと考えられる。