「相場」「品質」2つの観点から「高すぎる」

販売不振の理由は複数ある。自社の店舗同士で顧客の奪い合いが起きていることや、郊外ロードサイドで家族連れを取り込めていないこと、急拡大の中で従業員教育が追いつかずサービスの質が低下していることなどが挙げられるが、筆者が最も深刻だと考えるのは、「価格が高い」という点だ。

今年1月、いきなりステーキ店頭に掲示された張り紙(写真提供=著者)

いきステの主力商品である「リブロースステーキ(300グラム)」は2070円(税抜き、以下同)。これが「相場」と「品質」という2つの意味合いから、高すぎるのだ。

1000円のラーメンを売るラーメン店を例にして説明したい。1000円のラーメンは相場を考えると高い。この場合の「相場」は、ラーメンとしての相場と食事としての相場の2つがあるが、ラーメンは大半が1000円未満のため、前者でいえば1000円のラーメンは価格が高い。また、1回の食事に1000円を支払える人はそう多くはないので、食事の相場を考えても1000円のラーメンは価格が高い。

つまり、1000円のラーメンは「相場に対して価格が高い」といえる。一方で、この1000円のラーメンがフカヒレやアワビのような高級食材をふんだんに使ったものであれば、「品質を考えると価格は安い」といえる。

郊外ロードサイドの相場で考えれば安い

このように「相場」と「品質」によって適正価格は異なる。そのため、それぞれ別に考える必要があるだろう。この2つの側面からいきステの価格を見るとどうなるか。

「相場に対しての価格」を郊外ロードサイド立地と駅前立地で分けて考えてみよう。

郊外ロードサイド立地の場合、「リブロースステーキ(300グラム)」の2070円(税抜き、以下同)という価格は、相場に対してそれほど高いとはいえない。郊外ロードサイドで競合するステーキチェーン「ステーキガスト」の「特選リブロースステーキ(250グラム)」は1899円、ブロンコビリーの「炭焼き極選リブロースステーキ(300グラム)」は3480円と高価格だ。また、郊外ロードサイドには焼肉店など価格が高い業態店が少なくない。これらと比べると、いきステは相場に対して価格が高いとはいえないだろう。

いきステが郊外ロードサイドで苦戦している理由は、価格が高いことよりも家族連れを取り込めていないことのほうが大きい。子ども向けメニューが充実していなかったりテーブルが小さくて家族でゆったり過ごしづらかったりと、メニューや店舗の構造が家族連れに適していないためだ。