リブラが実用化されてブロックチェーンの技術を用いたデジタル預金、デジタル決済、デジタル送金ができるようになれば、スイフト(SWIFT=国際銀行間通信協会)のような特定の国に依存した銀行間の送金決済システムは必要なくなる。日本の旧式でかつ高価な全銀システム(全国銀行データ通信システム)も要らなくなる。世界中の個人と個人がスマホのアプリでつながって直接お金(リブラ)のやりとりができるようになるからだ。

クレジットの概念も否定される。クレジットカード会社が店側から3~5%程度の手数料を取るのは、決済日と支払日の時間差コストや回収(取り立て)コストなどが含まれるからで、ブロックチェーン技術で瞬時に決済や送金ができるようになると、そうしたコストはほとんどかからない。ネットの決済コストだけで済むから手数料は大幅に安くなる。たとえば中国アリババグループのオンライン決済システムである「アリペイ」は、使ったその場で引き落とされるデビット決済で、手数料は0.3%程度。それでも運営するアント・フィナンシャルは相当儲かっている。

リブラも0.3%程度の手数料で成り立つとすれば、店側は手数料が大幅に安くなり、かつ瞬時に入金されるので大喜びだ。そのときクレジットカードは20世紀の遺物に成り下がる。リブラが普及すれば自分たちのビジネスが否定される運命のビザやマスターカードがリブラ協会から抜けるのも当然だ。

リブラの登場は既存の金融システムのくびきから世界の人々を解放する金融革命だと私は思う。ザッカーバーグ氏は革命児として、そこをうまく説明して世界中の市民を味方に付けなければいけない。

ライバルは世界支配を狙うデジタル人民元

世界の国際決済システムの中核を担っている前述のスイフトがアメリカの強い影響下にあることも、私がリブラの導入に賛成する理由の1つだ。

国境を越えた決済や送金の大半は米ドルが使われるが、アメリカの制裁対象に指定された銀行や企業はスイフトのシステムが使えなくなり、米ドル建ての決済や送金ができなくなる。だからトランプ政権がイランと取引している銀行や企業に制裁を科すと言い出したときには、多くの企業や銀行が震え上がってイランから手を引いた。

米ドルが基軸通貨で、アメリカが国際決済システムを握っているから、トランプ大統領の身勝手に世界中が振り回される。従って世界は米ドル以外の基軸通貨、スイフト以外の国際決済システムを求めている。リブラにはその可能性が大いにある。だからこそ、トランプ大統領は「暗号資産は好きではない。通貨ではないし、価値も不安定だ」などとツイートしてリブラを潰そうとしているのだ。