治療実績は病院の実力を知る一つの指標。納得の治療を受けるには、病院と「治療法」選びが重要。手術数から実力病院を検証する。

 

5ミリ以上は手術の検討を

脳外科医が手がける主な手術のうち、難度の高い脳腫瘍とくも膜下の破裂脳動脈瘤開頭術(社会復帰可能の目安のJCS30未満)と未破裂脳動脈瘤(開頭術と血管内治療)の手術数をまとめた。

脳の表面を覆うくも膜の下には、脳が活動するための酸素と栄養を供給する血管が走る。その血管に動脈瘤ができ、破裂してくも膜下出血をおこすと、血液が脳を圧迫し、あるレベルを超えると脳の正常な働きを困難にする。その結果、3分の1の人には後遺症が残り、3分の1は、命を落とすことになる。脳卒中の中でも致死率の高い病気だけに、脳ドックを受診し、未破裂のうちに治療する人も増えてきている。

日本脳卒中学会が「脳卒中治療ガイドライン2009」の中で、「未破裂脳動脈瘤の治療」についても触れている。それによると、患者の余命が10~15年以上ある場合に(1)大きさ5~7ミリ以上、または、(2)5ミリ未満であっても、動脈瘤が複数ある、破裂の多い脳底動脈、前交通動脈、および内頸動脈・後交通動脈分岐部などの部位に存在する、動脈瘤瘤の足元がしまって治療がしやすいもの、形がいびつで破裂しやすい場合などで、治療が推奨されている。

治療の判断は、病院や医師の裁量も大きい。血管内治療の未破裂脳動脈瘤症例数37で最多の名古屋大学医学部附属病院では、4ミリ未満は経過観察。7ミリ以上は手術を推奨。4~6ミリは、手術する長所と短所を説明し、患者の意思を反映させる方針をとる。大きさ以外にも動脈瘤の形、年齢などを考慮する。経過観察の際には、1年に1度程度、三次元CT検査を実施。形や大きさをチェックし変化が認められるときは、破裂リスクが高まるので、手術を勧める。

 

手術に迷ったらセカンドオピニオン

治療法には、開頭術(クリッピング術)と、血管内治療(コイル塞栓術)がある。

開頭術では、頭蓋骨を開け、血管にできた動脈瘤の根元をチタン製のクリップで留め、動脈瘤の中に血液が入らないようにして破裂を回避する。治療の歴史も古く、術後経過が良好なら、再発の可能性は低い。こめかみの真下にある中大脳動脈や内頸動脈・後交通動脈分岐部の多くは、開頭術が適している。

ただし、脳の奥にある脳底動脈や、内頸動脈では、クリップをかける操作で、穿通肢と呼ばれる細い血管や視神経を傷害し、後遺症が残る可能性もある。

そこで、開頭術を補完する形で10年ほど前に導入されたのが、欧米を中心に実施されてきた血管内治療だ。血管にカテーテルを入れ、動脈瘤の中にプラチナのコイルを送り込む。コイルが入ることで、血流が滞り動脈瘤の中で血がかさぶたのように固まり、動脈瘤を塞ぐ。脳の奥の治療もでき、頭に傷が残らず、入院期間も短い。2010年7月、VRDと呼ばれる自己拡張型のステントで血管形成をして、コイルを入れる方法が保険適用となり、治療の可能性が拡大した。

ただ、血管内治療は大きな動脈瘤や、動脈瘤から重要な血管が出ているときには、向かない。また、手術中に破裂などで出血すると対応が難しくなる。さらに、塞いだはずの動脈瘤に再度血液が入ってしまうケースが、10ミリ以下の動脈瘤で3~10%生じ、その際は再度手術となる。そのため術後検査が欠かせず、術後は、血液の流れをスムーズにする抗血小板剤を服用せねばならない。こういった治療の安全性を確保するために日本脳神経血管内治療学会では、専門医制度を設け、手術実績をもつ指導医を認定し、HPで公表している。