なぜデジタル企業がテレビへ先祖返りしているのか
しかしながら、これらWeb広告に長けているはずのデジタル企業が、広告効果をデジタルに算定しづらいテレビCMを活用している例を多く目にします。例えば、メルカリ、楽天カード、トリバゴなどは記憶に残る読者も多いのではないでしょうか。テレビCM調査を行っているサイカ社調査によれば、2018年テレビCMの出稿の伸びを示したランキングでは、ネットサービスを出自とする企業がトップ15社中6社ランクインしています。
本来、Webマーケティング手法に強みを持つはずのデジタル系企業が、なぜ効果計測が難しいとされているテレビCMの出稿量を増やしているのか。この矛盾とも取れるマーケティング戦略とその背景は、ビジネスモデルと広告特性の2つの観点からひもとくことができます。
デジタル企業は新規顧客数と離脱数がキモ
まず、デジタル企業のビジネスモデルは大きく3つ分類できます。1つめは、転職や旅行など一つ領域の情報を集めて掲載するバーティカルと呼ばれるモデル。2つめはSNSです。最後に、月額や年会費などの期間で費用を払うことでサービスが使い放題になるサブスクリプションです。
そして、この3つのモデルに共通して言えることは、一定規模の新規ユーザー数が不可欠なモデルであるということです。
バーティカル型やSNS型は、一定規模のユーザー数を確保しなければ、経営に不可欠な広告主を確保できません。広告主からすれば、一定数以上のユーザーがいないサービス上に、広告を載せても効果は望めないため、PV数やユーザー数が多い媒体を優先します。
サブスクリプション型では、放映権や版権、オリジナルコンテンツへ初期投資がかかりますが、これらの累積負債を回収できなくなる恐れがあります。
また、これらのサービスは、ユーザー数が増えれば増えるほどサービスの利便性が向上する「ネットワーク外部性」が働きやすいモデルです。従って、正の循環を作るためにも、最初に利用者を大きく拡大しておくことは不可欠です。例えば、転職サイトのビズリーチは、登録ユーザーが増えるほど、登録企業数も増えて利便性が向上し、さらにユーザーが増えるといった具合です。