医療訴訟で原告、つまり患者側が勝訴する割合は、わずか18.5%(※)――そんな厳しい現実をご存じだろうか。「患者が病院に裁判でほとんど勝てない」のには、実はとある理由がある。弁護士で外科医でもある、医療訴訟を専門とする富永愛氏に、医療訴訟の「本当のところ」を聞いた。

なぜ医療過誤訴訟は「被害者の勝率18%」なのか

1999年の横浜市立大学医学部附属病院で起きた患者取り違え事故などをきっかけに2000年頃から関心が高まり、日本では年々、医療訴訟の件数は増えている印象です。対して医療訴訟を専門に扱える弁護士の数はまだ少なく、私は京都に事務所を構えていますが、関西でも数人、全国を見ても、実は数えるほどしかいません。そのため、私のもとには、ほかの弁護士に「わからない」といわれたケースや医療関係者からの相談が多く集まってきます。

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法律相談でお話しして、「勝訴できる」と判断できるのは、だいたい10件あれば1件。残りの2~3件が、「和解」できる可能性のある案件、そして残りは、「残念ですが、証拠が不十分で、訴訟は諦めたほうがよい」と、回答するケースです。

※最高裁判所、平成30年データ。