「5G」でサムスンなどが上向いてもおかしくはないが…

その中で、韓国の半導体業界では、最大手であるサムスン電子の業績に底入れの兆しが出始めている。追い風となっている要素の一つとみられるのが、世界的な5G通信の普及だ。

2019年4月には米国や韓国でスマートフォン向けの5G通信サービスが始まった。同年11月には中国の50都市で5G通信サービスが開始された。特に中国では急速かつ大規模に5G通信が普及している。一部の予測では、2025年、中国における5G接続数は6億件に達し、米国の1億9000万件を追い越すとの見方もある。

2019年1~3月期に比べ、4~6月期と7~9月期は、サムスン電子の半導体事業の営業利益が小幅ながら増加に転じた。このデータを額面通りに受け止めると、同社の半導体事業は5G通信関連の需要を取り込み、徐々にではあるが底を打ちつつあるように見える。

また、世界全体での半導体市況のサイクル(シリコン・サイクル)の観点から見ても、目先、サムスン電子など一部大手企業の業況が幾分か上向いてもおかしくはないように見える。2016年から2017年にかけて、世界全体でデータセンターへの投資が増加するなどし、メモリを中心に半導体需要が大きく増えた。これはサムスン電子が業績拡大を実現し、韓国の景気が安定する要因だった。

自律的に息の長い回復を実現するのが難しいワケ

その後、2017年半ばごろに市況はピークを迎え、2018年半ばごろには世界的な半導体市況の悪化が鮮明化した。2018年下旬から2019年前半にかけて、世界の半導体市況はボトムを迎えたとの見方もある。5G対応スマホ向けのICチップや自動運転向けの半導体需要の高まりなどから、世界の半導体市況の本格的な底入れは近いとの期待もあるようだ。

そのほか、米中が貿易摩擦の休戦協定の締結に取り組んでいるとの期待が高まっていることも世界経済全体の動向に左右されやすい韓国経済にとって重要だ。また、2020年1月、マイクロソフトの“ウィンドウズ7”のサポートが終了する。それを受け、一時的に世界各国でパソコン買い替え需要が高まり、サムスン電子をはじめとする半導体メーカーを中心に韓国経済に部分的な下支え効果が波及することも考えられる。

ただ、韓国経済全体が、自律的に、息の長い回復を実現するのは難しいだろう。引き続き韓国経済は不安定に推移する可能性がある。