牛肉より高い「金華豚1万円コース」を提供

12月のイルミネーションが一段と華やかなJR東京駅前――。商業施設「KITTE」(キッテ)の6階に「平田牧場『きわみ』」という名のレストランがある。

同社は高級豚肉料理を提供するレストランを、本拠地の酒田市のほか、東京都内のコレド日本橋(2004年出店)や六本木ミッドタウン(同2007年)にも展開する。

KITTEの店は、平牧金華豚(年間生産頭数2万5000頭)を中心に提供。メニューには、より生産頭数の少ない「平牧純粋金華豚」(同1000~1200頭)もあり、とんかつやしゃぶしゃぶで味わう1万円のコースもそろえる。同社の豚肉は「牛肉より高い」といわれる。

「食肉の序列は、牛肉・豚肉・鶏肉の順に思われています。そのイメージを変えたい。当社の豚肉は、とろけるような肉質で甘みもあります。それを消費者のみなさんにも知っていただきたく、15年前から東京都心でもレストランを運営しています」(新田氏)

新田氏の社長就任は1999年。就任時に掲げた経営理念「より豊かな食生活、食文化を創造する、感動創造企業」の最後部分を、今年(2019年)「健康創造企業」に改めた。後述する「食生活で健康をめざす」の徹底だという。

撮影=プレジデントオンライン編集部
平田牧場の新田嘉七社長

看板の「平牧三元豚」は人気ブランドの3位に

現在、平田牧場は東北地方を中心に養豚場を直営で11カ所持ち、それ以外に約50カ所の提携農場(肥育農場と飼育農場)がある。創業者の新田嘉一氏(現会長。社長の父)が半世紀以上前に「米作の将来性を不安視して」転身。最初は2頭の豚を飼い始めた。

「豚」と聞くと、中年以上の世代は白い豚を思い浮かべる人が多いかもしれない。だが、あれはかつて主流だった「中ヨークシャー」という品種で、肉質は良いが脂身も多く精肉の割合が少なかった。嘉一氏が最初に飼った2頭もこの品種だったが、他の品種と交配させて品種改良が進んだ結果、今ではあまり見かけなくなった。

平牧三元豚は「ランドレース(L)」「デュロック(D)」「バークシャー(B)」を交配した豚だ。三元豚=三種の豚の交配種の意味で、同社以外の業者も手掛けており、品種はLDB以外もある。こうしたブランド豚(銘柄豚)は、国内で約400も存在するという。

「国産ブランド豚肉に関するバイヤー調査」(2016年12月16日~2017年1月16日、日経リサーチ調べ)の人気ランキングでは、1位「かごしま黒豚」(鹿児島県)、2位「あぐー豚」(沖縄県)に次ぎ、「平牧三元豚」は3位となった。首位の「かごしま黒豚」は江戸時代からあり、純粋(=単一種)のバークシャーとして人気だ。